雑詠」カテゴリーアーカイブ

雑詠(2022年8月号)

酸実の花日影にはかに夏めきぬ		青木百舌鳥
酒粕は浪乃音なり山葵漬
いささかの蕨をとりて濃き日ざし
来し方を見て葉桜の明るさよ

顔のなきマネキン怖し原爆忌		山口照男
生きるとは凄まじきこと鳥交る		塩川孝治
貰はれて小猫の名前替りけり		北村武子
庭師の手歴然として若緑		馬場紘二

雑詠(2022年6月号)

薫風や鉋の背より鉋屑		山口照男
糸蜻蛉息をころすと言ふことも
シャープペン押して引つ込め梅雨深し
梅雨の森大聖堂のごと静か

又夜が来て薄氷を張つてゆく		北村武子
住職は炬燵に死亡届置く		藤野 澪
ある晴れた日に流氷が遠くから		小沢藪柑子
恢恢と土に影あり春隣		青木百舌鳥