礒鵯の唄 本井 英 礒鵯が讃へて花の朝かな 朝桜かなひいやりと咲きつらね 日の色に染められてをる朝桜 手術することを選びて朝桜 訪ひて椿の島の椿餅 若きらが戯れ喰へり椿餅 椿餅猫の温さの膝にあり 東京が近づく花の車窓かな 汐引きし橋杭に貼る花の屑 花房に重さありけり掌でつつみ
捨て積みの蛸壺に蠅生まれつつ 翅華奢に生まれたてなる蠅ならめ 独居の灯ぽつと八十八夜かな 春水がしゆつと小便小僧より 瞳孔をこじ開くる赤赤躑躅 春風や重箱堀に吹きたまり 大鷭も機嫌良からんキョンと啼き 二輪草仕舞ひの日々の雨の今日 枯れ色の添ひつつ貝母潰えつつ 朝毎の礒鵯の唄夏ちかし