主宰近詠(2019年4月号)

春を思はしむ   本井英

足裏にひつつく床や寒稽古

ホワイエにダンス部の寒稽古かな

寒稽古へドアをバタンと出て行きし

犬山稽古会 八句

黄鶺鴒の方ががつしりしてをるよ 三十三才低くか黒く川跨ぐ




鉄橋の吼えては止みて寒の闇

暁の浮寝の陣の黒とのみ

鴨の陣いくつ犬山頭首工

鴨の陣解けと朝日が促すよ

伝令のごと鴨の陣抜け出せる




カンバセ顔にそひてただやう息白し

鴨は鴨鵜は鵜でくらし頭首工

明治村 二句

白いもの落ちて来さうや明治村 寒ざむと三八銃を展示せる 切山椒の色みな春を思はしむ




くすぐりの少し度が過ぎ初芝居

日脚伸ぶ日々を閑散スキー場

出勤のホステスたちに日脚伸ぶ

マフラーに顎をうづめて憎みけり

蛇口ひねれば寒の水棒状に

主宰近詠(2019年3月号)

はれがまし  本井英

小諸・富山 三句

消火器の赤のきはだち庵の冬 ぎくしやくと融雪栓の噴きはじむ 鰤待ちて沖にしづかに定置網 菰巻に顔を寄すれば香りけり 明るさや時雨やどりの池ほとり





櫨の実のわつさわつさと生りきそひ

花八手菌糸のごとくたくましく

海苔篊をすり抜けてくる風ぬるし

小ぶりなる防災倉庫島の冬

泉水にやつて来てをり都鳥





ワイパーが拭へば次の霙かな

水仙や腓の日ざし楽しさに

顔見世や舞妓まじりにはれがまし

顔見世の役者が朝の食堂に

ボロ市の真只中に住まひせる





混ぜ垣やまぬかれがたく茶は花を

掃き寄すや銀杏黄葉の粉々も

充電のごとく冬日に身をさらし

ひとり来て心はなやぎ冬紅葉

柚子三つ惑星のごと湯にうかび

主宰近詠(2019年1月号)

201901_p04-05_近詠_入稿

主宰近詠(2018年12月号)

201812_p4-5近詠入稿

主宰近詠(2018年11月号)

南なだりの   本井 英

梅を干し了へたる笊を干してある

梅花藻の花端正に白に黄に

藻の花を水しわしわになりて梳く

真清水に薬罐 が漬けてありけるよ

川底に浪皺の影涼しけれ




雨あとの茎のつやつや滑莧

新涼の風我が耳を澄ませゆく

新藷をさぐり掘りせし痕ならめ

はだかりて発電パネル鳳仙花

しもつけの咲かなんとして濃かりけり




野の風に夏帽の鍔べのべのす

湿原に兄貴然たり油がや

のうぜんや村の暮らしを愛し棲み

岳麓の南なだりの豊の秋

江ノ電の涼しさは極楽寺のあたり




ばらまいて白ならぬなきヨットの帆

色見本のやうやデイゴは赤極め

片陰に呑みこまれたる蜑が路地

秋濤の炸裂しては霧らひては

秋濤の飛沫かはして磯鵯は