雑詠(2017年8月号)

石段を上がればありし茅の輪かな		藤永貴之
初嵐へくそかづらの花こぼし
蟷螂の創一つなく死んでをり
日の当たる石にとまれり秋の蝶
亀鳴くや鵠(クグヒ)の沼の消えし町	津田祥子
小径を麓へたどり春深し		小沢藪柑子
一旦は空へ空へと花吹雪		前田なな
春の蚊の目の前に来てそこに消ゆ	高瀬竟二

雑詠(2017年7月号)

夏蝶の翼に青きブーメラン			前北かおる
青桐の幹颯爽とみどりなる
山の水張り直したるプールかな
吹き縒れて御神酒の糸や海開

駅までのシャッター通り苗木売る	小沢藪柑子
風邪の子の手を差し出して来りけり	杉原祐之
堅香子に反れよ反れよと日も風も	青木百舌鳥
食卓の父の不在や扇風機		櫻井茂之

雑詠(2017年6月)

野遊のリード伸ばせるだけ伸ばし		井上 基
梅林の地図あまりにもおほざつぱ
白梅の丘海峡の自衛艦
ガラガラと春一番の波頭

スクラッププレス工場の雪の果		今井舞々
竹きゆうと鳴りて北風そこにあり		稲垣秀俊
なつかしきこもれ日坂の茂かな		飯島ミチ
白梅の吹き流されてゆく水路			小沢藪柑子

雑詠(2017年5月)

ふと夫のゐる気配あり初鏡       根岸美紀子
迎春とある本殿を遠拝み
寒晴や機影は銀に光りつつ
翡翠に出会ひしことも女正月

目白どち仲間増やして戻り来し     永田泰三
餅花に残れる指の形かな        原 昇平
寒雀咥へし猫の横切れる        坂 廣子
川に沿ひ線路に沿ひて福詣       近藤作子

雑詠(2017年4月号)

小父さんが去り山雀もゐなくなり    児玉和子
枯芝を見渡す石の露台かな
綿虫や石の露台に石の椅子
綿虫の細かに震へながら飛ぶ

楮蒸す足助の空に湯気の立ち      大山みち子
一時間半も歩いて狩の宿        小沢藪柑子
エンディングノートなど書き日短か   井上 基
父母と錦市場(ニシキ)の話酢茎食ぶ   冨田いづみ