雑詠(2019年4月号)

ゆるやかに道曲がりゆく枯木立		山内裕子
庭園の外へも銀杏散り続く
被服廠跡の公園銀杏散る
排気塔の蒸気濛々冬の朝
草揺れて笹鳴少し遠ざかる
心中を聞かなくなりて近松忌		津田祥子
笹鳴のここにも聞こえ帰り道		玉井恵美子
ストーブにおでん鍋ある定食屋		田中 香
沼よぎる寒禽なにか言ひ残し		梅岡礼子

雑詠(2019年3月号)

コンバインのライトが帰る刈田道		磯田和子
アーケードの出口混み合ふ秋時雨
きちきちの野路の竪穴式住居
葛の蔓花ごと垂れて四ツ谷駅

キャンパスを二人乗りして小六月		園部光代
湖面を渡つてきたる時雨かな			小沢藪柑子
林中のひよろと伸びたる茶にも花		山内裕子
小春日のトウノ当尾の仏供華に蝶		柳沢木菟

雑詠(2019年1月号)

からまつて落ちゆく泥鰌放生会     矢沢六平
蟷螂の猛り続けて転げけり
夕月や蔵の框に猫の皿
鈴虫のながく鳴き止む夜更かな
コスモスやダム湖へ続くダンプ道

甘蔗畑の先に不意に崖        小沢藪柑子
日没りてなほもしづれる雪のある    藤永貴之
俳壇の遠くにありて初句会       前北かおる
忘れたる頃にずどんと威銃       井上 基

雑詠(2018年12月号)

夏蝶のごとく翔けたし生きたしよ     望月公美子
我楽多と言う字はためく夏の市
秋日濃し壁一面の世界地図
板の間を隈なく拭きて涼しかり

平成の最後の八月十五日         柳沢木菟
風邪抜けてけふ猫島に猫とゐる      藤永貴之
奉納の舞にやせゆく花氷         山内繭彦
噴水の飛沫を浴びる側へ行く       磯田知己

雑詠(2018年11月号)

井戸はまだ生かしてありぬ柿青し         児玉和子
白南風に沼面ゆるゆる押されをる
浜木綿の蕊踊らせて咲けるかな
椿とも薔薇ともほぐれ水中花

河骨や濁れる雨後の水に立ち     江本由紀子
まだ誰も起きてこぬ朝月見草     山内裕子
心地良い疲れ運動会も済み      西岡あやめ
烏瓜の花のむくろの白さかな     天明さえ