雑詠(2018年11月号)

井戸はまだ生かしてありぬ柿青し         児玉和子
白南風に沼面ゆるゆる押されをる
浜木綿の蕊踊らせて咲けるかな
椿とも薔薇ともほぐれ水中花

河骨や濁れる雨後の水に立ち     江本由紀子
まだ誰も起きてこぬ朝月見草     山内裕子
心地良い疲れ運動会も済み      西岡あやめ
烏瓜の花のむくろの白さかな     天明さえ

雑詠(2018年10月号)

からつぽの水鉄砲に撃たれけり			小野こゆき
菖蒲田に花殻摘みの赤襷
黒南風にぐらぐら浜の信号機
ディンギーの鱚釣舟を縫ひゆけり

吾子もゐる運動会の楽きこゆ			藤永貴之
初夏や嬰の足指豆のやう			牧原 秋
碁盤商溽暑の町にしんとあり			児玉和子
十薬や躙り口には鍵掛けて			岩本桂子

雑詠(2018年9月号)

燕待合室を一周す     塩川孝治
坂を上り坂を下りて青葉風
今は只静かに桜実を結び
アーチ潜りて薔薇の園出づるかな

裏作の豊後平野の麦の秋     木山杣人
桜もち句座に香りて配らるる   前田なな
鎌倉を通り過ぎたるはたた神   岩本桂子
三日月や小さきぬくき手を引いて 櫻井茂之

雑詠(2018年8月号)

難持坂をのぼれば花の雲のうへ            冨田いづみ
義父逝きしこと葉桜となりしこと
チューリップ閉づる力のなく散れる
仏具屋にたまの客あり春埃

熊笹の若葉ぬつぺり緑色        柳沢晶子
客着いてロビー華やぐアマリリス    町田 良
ステンレス色に霞める今朝の海     浅野幸枝
レントゲンバスが来てをり遅桜     矢沢六平

雑詠(2018年7月号)

水に散る一人の影や蜆舟                         辻 梓渕
梅の寺多摩の横山指呼にして
鐘楼の棕梠の橦木のあたたかし
地図に載る大きな中州水温む

妻の髪娘の髪に落花かな        原 昌平
江ノ電の谷底行くや山笑ふ       岩本桂子
お見合の席とは知らず雛の間      井上 基
句は淡く句評は濃ゆく梅日和      杉原祐之