雑詠 « 夏 潮

雑詠(2018年8月号)

難持坂をのぼれば花の雲のうへ            冨田いづみ
義父逝きしこと葉桜となりしこと
チューリップ閉づる力のなく散れる
仏具屋にたまの客あり春埃

熊笹の若葉ぬつぺり緑色        柳沢晶子
客着いてロビー華やぐアマリリス    町田 良
ステンレス色に霞める今朝の海     浅野幸枝
レントゲンバスが来てをり遅桜     矢沢六平

雑詠(2018年7月号)

水に散る一人の影や蜆舟                         辻 梓渕
梅の寺多摩の横山指呼にして
鐘楼の棕梠の橦木のあたたかし
地図に載る大きな中州水温む

妻の髪娘の髪に落花かな        原 昌平
江ノ電の谷底行くや山笑ふ       岩本桂子
お見合の席とは知らず雛の間      井上 基
句は淡く句評は濃ゆく梅日和      杉原祐之

雑詠(2018年6月号)

海風はいつも冷たし花楝			藤永貴之
ほととぎす天山一日(ヒトヒ)雲の中
教育実習生明日から田植手伝ふと
楊梅の樹が境内の真ん中に

御渡りに俄か景気の湖畔かな		矢沢六平
春水に立てば地渋のふるへけり		青木百舌鳥
子烏やけふまだ怖さしらぬ貌		山口照男
紺浴衣屈みて入る屋形船		櫻井茂之

雑詠(2018年5月号)

この雪の下の景色を忘れたり		国分今日古
元日の雨の中なる日章旗
靴で耳つけてトトロの雪だるま
凍道に探れる足の置き所

葉痕に猿面冠者春隣			柳沢木菟
うす闇を得て十薬のここだ咲く		櫻井茂之
桐の花落ちて小さく弾みけり		山口照男
探梅行墓場の裏に出てをりぬ		馬場紘二

雑詠(2018年4月号)

流線の左旋右転ぞ吹雪なる		稲垣秀俊
鍬深く打込みけふの葱を掘る
海へ海へ地吹雪の波連綿と
虎落笛コーヒー苦き仮事務所
打橋や弁天島の年用意		小野こゆき
朝寒の仕事場にまづ灯をともす		山本道子
雨もさりながら喪にある寒さかな	岩本桂子
注連飾買うて渡船の列にあり		田中 香