雑詠」カテゴリーアーカイブ

雑詠(2024年3月号)

冬ぬくし博物館にキッチンカー		遠藤真智子
十一月の日射し鯨のモニュメント
薄暗きみあかし二灯神の留守
曇天の薄日に傾ぐ石蕗の花

栗を煮る夫ありし日のやうに煮る	牧野伴枝
すつくりと枯れし姿も男郎花		渡邉美保
焼藷にある重心のごときもの		田中 香
瓢の笛音階なさぬ音ばかり		山内繭彦

雑詠(2024年1月号)

妻逝きて物音しない夜長かな		田中金太郎
芒野や疾く過ぎゆける雲の影
金太郎飴も売られて菊まつり
ビルの灯の上にしづかにけふの月

遊園地消えてどりこの坂の秋		釜田眞吾
病む人に夜は長しよ茶立虫		山内裕子
水澄むや夢に終はりし一人旅		牧原 秋
くつきりとキレツト切処見ゆる秋の晴	武居玲子

雑詠(2023年12月号)

八月や深き疲れに眼閉ぢ		児玉和子
八月の夢に逢ふ人みな故人
駒下駄や踊り疲れて戻り来し
路地路地を踊り流して夜明けまで

片陰より人の出て来る青信号		飯田美恵子
丸き背にふと触れてみし生身魂		田中 香
白芙蓉手入れ届きし資料館		江本由紀子
打水の旧道沿ひに質屋かな		冨田いづみ