雑詠(2018年6月号)

海風はいつも冷たし花楝			藤永貴之
ほととぎす天山一日(ヒトヒ)雲の中
教育実習生明日から田植手伝ふと
楊梅の樹が境内の真ん中に

御渡りに俄か景気の湖畔かな		矢沢六平
春水に立てば地渋のふるへけり		青木百舌鳥
子烏やけふまだ怖さしらぬ貌		山口照男
紺浴衣屈みて入る屋形船		櫻井茂之

雑詠(2018年5月号)

この雪の下の景色を忘れたり		国分今日古
元日の雨の中なる日章旗
靴で耳つけてトトロの雪だるま
凍道に探れる足の置き所

葉痕に猿面冠者春隣			柳沢木菟
うす闇を得て十薬のここだ咲く		櫻井茂之
桐の花落ちて小さく弾みけり		山口照男
探梅行墓場の裏に出てをりぬ		馬場紘二

雑詠(2018年4月号)

流線の左旋右転ぞ吹雪なる		稲垣秀俊
鍬深く打込みけふの葱を掘る
海へ海へ地吹雪の波連綿と
虎落笛コーヒー苦き仮事務所
打橋や弁天島の年用意		小野こゆき
朝寒の仕事場にまづ灯をともす		山本道子
雨もさりながら喪にある寒さかな	岩本桂子
注連飾買うて渡船の列にあり		田中 香

雑詠(2018年3月号)

蓮刈られ鉢に短かき茎の数			山内裕子
安全旗風に勤労感謝の日
移りつつ日矢をこぼして冬の雲
冬木の芽上を向かんとしてをりぬ

巣穴から少し歩いて蜂飛べる		櫻井茂之
種を採るおさるの貌にさも似たる	三上朋子
自動ドア抜けて落葉の香の中へ		前田なな
著膨れて所作揺るぎなく橋普請		稲垣秀俊

雑詠(2018年2月号)

滝水のぐうんと伸びて落ちにけり		山本道子
滝水の伸びて崩れて滝壺へ
朝露を載せて生姜の葉の匂ふ
自然薯(ヤマイモ)の蔓と巻き合ひ灸花

残る蚊に刺されて夜半を目覚めをり	町田 良
秋蝶の袂をひとつ失へる		田中 香
行秋を灯して雨の競馬場		冨田いづみ
今朝の秋わたしスキップしたりして	井出保子