雑詠(2017年6月)

野遊のリード伸ばせるだけ伸ばし		井上 基
梅林の地図あまりにもおほざつぱ
白梅の丘海峡の自衛艦
ガラガラと春一番の波頭

スクラッププレス工場の雪の果		今井舞々
竹きゆうと鳴りて北風そこにあり		稲垣秀俊
なつかしきこもれ日坂の茂かな		飯島ミチ
白梅の吹き流されてゆく水路			小沢藪柑子

雑詠(2017年5月)

ふと夫のゐる気配あり初鏡       根岸美紀子
迎春とある本殿を遠拝み
寒晴や機影は銀に光りつつ
翡翠に出会ひしことも女正月

目白どち仲間増やして戻り来し     永田泰三
餅花に残れる指の形かな        原 昇平
寒雀咥へし猫の横切れる        坂 廣子
川に沿ひ線路に沿ひて福詣       近藤作子

雑詠(2017年4月号)

小父さんが去り山雀もゐなくなり    児玉和子
枯芝を見渡す石の露台かな
綿虫や石の露台に石の椅子
綿虫の細かに震へながら飛ぶ

楮蒸す足助の空に湯気の立ち      大山みち子
一時間半も歩いて狩の宿        小沢藪柑子
エンディングノートなど書き日短か   井上 基
父母と錦市場(ニシキ)の話酢茎食ぶ   冨田いづみ

雑詠(2017年3月号)

杞陽忌の時雨れ時雨れて暮れゆけり   遠藤房子
朝霧の晴るる明るさ鳥横切り
これよりは散るばかりなる紅葉山
石蕗の黄や海見はるかす蜑の墓

トロッコの一駅ごとに冬近し      堀内敦子
東京の奧に富士置き冬の晴       町田 良
十三は晴西院は時雨るると       酒泉ひろし
白濁の爪立て黒部川澄めり       前田なな

雑詠(2017年2月)

くす玉の片割れづつの海月かな      前北かおる
塗り台に陶の雛の映り込む
すぐしやがむつられてしやがむ犬ふぐり
古雛とろとろとろと太鼓かな

春一に攫はれ雨のよこつとび       藤永貴之
野分中おでこまともに吹かれくる     岩本桂子
秋日傘たたみ遊覧船に入る        近藤作子
大型トラックサルビアに左折して     杉原祐之