主宰近詠(2024年5月号)

春水舌を  本井 英

民家園のほまち仕事の接木鉢

春田なる白鳥向きをばらばらに

垂るる雲に頭つつかへ斑雪山

雛飾足裏冷たく拝見す

雛道具に怠るまじき琴棋書画

うすら日に浮き上がりくる雪景色

雲中に日の明るさや揚雲雀

昇りつめてじれてをるなり揚雲雀

落椿をお狐さまの()にちよんと

岬径のだんだん高し赤椿


芍薬の芽立ち仏の座が囃し

鷹部屋に鷹の剝製春寒し

引き堀の土手に貼りつき金瘡小草(キランソウ)

貝母咲く高さを風の流るるよ

ちりちりと蓬ぞ摘めば楽しからむ

父と子に脂魚(ムツゴ)が釣れて春の風

鴨は背の春水の珠ふり落とし

青柳に新幹線の橋はるか

河上の連山霾に閉ざされて

崖下の春水舌を垂れやまず

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