春水舌を 本井 英 民家園のほまち仕事の接木鉢 春田なる白鳥向きをばらばらに 垂るる雲に頭つつかへ斑雪山 雛飾足裏冷たく拝見す 雛道具に怠るまじき琴棋書画 うすら日に浮き上がりくる雪景色 雲中に日の明るさや揚雲雀 昇りつめてじれてをるなり揚雲雀 落椿をお狐さまの頭にちよんと 岬径のだんだん高し赤椿
芍薬の芽立ち仏の座が囃し 鷹部屋に鷹の剝製春寒し 引き堀の土手に貼りつき金瘡小草 貝母咲く高さを風の流るるよ ちりちりと蓬ぞ摘めば楽しからむ 父と子に脂魚が釣れて春の風 鴨は背の春水の珠ふり落とし 青柳に新幹線の橋はるか 河上の連山霾に閉ざされて 崖下の春水舌を垂れやまず