「夏潮」別冊 「虚子研究号」 Vol. II (2012)

「夏潮」 虚子研究号 第二号 発刊に際して  本井 英
 「夏潮」別冊虚子研究号第二号をお届けします。「夏潮」別冊虚子研究号への思いは既
に第一号の「発刊の辞」に述べました。そこに「年一冊のベースで」と記しましたことが
取り敢えず守れたことを自祝したいと存じます。
 今号に於いて、創刊号に倍する執筆者を得たことを嬉しく存じております。どなたも心
から文学を愛し、俳句を愛し、虚子にたいして深甚の敬愛の情をお持ちの方々です。「群
盲象を撫づる」という諺があります。虚子を 「象」に擬え、筆者の方々を「群盲」に喩え
てはまことに失礼なことになってしまいますが、要はそれぞれの立場、主義、知見の異な
りこそ、「巨大なもの」の実像に迫る最大の武器になるのではあるまいかと思うのです。
虚子顕影のシステムは既に幾つか数えることが出来ます。しかしこれは多ければ多いに超
したことはない。「夏潮」別冊虚子研究号は、開かれた「小さな広場」として、これから
も多くの執筆者と読者を歓迎したいと思います。
 第一号の 「発刊の辞」では言及しませんでしたが、仮に名付けて「記念館だより」とい
う記事を毎号掲載してゆく所存です。世の中に「虚子顕影」を志す記念館が現在三箇所あ
り、日々研究・顕影の活動をされています。簡単に「記念館」とは言っても、その運営は
並大抵の努力では進みません。これらに携わる方々へ最犬の讃辞を惜しまない者ですが、
さらに本研究号の紙幅を割いてご研究の一端なりとも世に広報したいと考えます。
 今号も、なんとか「非売品」としてお配りしましたが、資金的な接助を担むものではあ
りません。応援してやろうとお思いの方は何卒よろしくお願い申し上げます。
 なお本号論文掲載順は執筆者の五十音順とさせていただきました。


目 次
一、	虚子俳壇復帰の戦略
	『俳句と自分』とその背景		井上泰至
二、	虚子連句私解 
	奉納歌仙 『唯訴る』 の巻 其二	大島富朗
三、	虚子選についての覚え書き		岸本尚毅
四、	関東大震災と虚子			筑紫盤井
五、	「虚子の文学」とは何か  
	山本健吉から見える高浜虚子		仁平 勝
六、	虚子の小説テーマ
	『風流撫法』をめぐつて		本多 燐
七、	「満州咏草」基礎研究  		前北かおる
八、	虚子の周辺~暁烏非無		松岡ひでたか
九、	「花鳥諷詠論」の発端		本井  英

《記念館だより》
一、	虚子と芥川能芝介の俳交 新出書簡を中心に
		芦屋虚子記念文学館 学芸員 	小林祐代
二、	新出 『岡安明壽宛て虚子書簡』 紹介
		小諸市立虚子記念館 前館長 	相場洋威 
                                  館長 	斎藤克実
三、 記念館紹介  鎌倉虚子立子記念館    館長 	星野高士

ISBN978-4-939116-81-0 C0092

第六巻のはじめに(2012年8月号)    

第六巻のはじめに                  本井英

 

 「夏潮」第六巻第一号、八月号をお届けします。

  創刊から五年が経過し、私たちは俳句雑誌「夏潮」六十冊を世に送り出したことになります。まだまだ幼い歩みですが共に手を携えて歩き続けようではありませんか。

  ところで昨年の三月十一日、造化から我々にもたらされた「もの」の重さを、私たちは未だ正確に測れてはいません。百年後、二百年後、その「もの」の実像が幾らか明らかになる頃、今、この文章を読んでいる私たちは誰も生きてはいません。せめて子孫たちが三月十一日以降の、先祖(私たち)の対応の悪さを恨むことになりませんよう、今を一生懸命努力したいものです。

  考えてみれば私たちは七十年前にも、違った意味で、大きなでき事に遭遇し甚大な被害を被りました。あの「でき事」の詳細が、時とともに明らかになるにしたがって、その前後の先輩たちの対応に、若干の疑問を抱いているのもまた事実です。

  そんな中でも、私たちの国土は美しく四季を迎えています。山川草木、鳥獣虫魚は私たちを取り囲んで、私たちの心を「優しく」してくれています。将来の日本は「こうあるべきだ」、「こうありたい」と、一人一人異なる理想を心に抱いている私たちですが、この美しい「国土」を愛するという点では完全に一致しているといえましょう。

  私たちの「花鳥諷詠」は、そこにこそ大いなる意味を見出すものです。季題の一つ一つに尊敬の念を抱き、あるいは友情のような親しさを感じて、それらを五七五に「言い止める」こと。季題が私たちの心の奥底の、私たち自身すら日頃意識しない「声」を誘い出してくれると信ずること。他人との「違い」を衒うのではなく、「類似」にこそ喜びを見出すこと。

  今年もまた「夏潮 虚子研究号」を刊行することができ、「第零句集シリーズ」も第二期を迎えることができます。夏潮会員の皆さんの応援に深甚の謝意を表します。

 

「夏潮」別冊 「虚子研究号」 Vol. I (2011)

「夏潮」虚子研究号発刊の辞  本井英

小誌「夏潮」も平成十九年八月、創刊以来四年を経過しました。ここまで何とか無事に刊行することが出来ましたのも、ひとえに先輩、同輩諸氏の心強いお力添えのお陰と感謝しております。

今まで何度も書いて参りましたが、「夏潮」は高濱虚子の文学を敬し慕う俳誌です。虚子を学び、虚子の求めた境地を求めることが「夏潮」の使命と考えております。このことは毎月の「夏潮」の誌面に反映されていると自負もしております。しかし、毎月の、限られた頁数では纏まった研究を掲載することは甚だ困難です。このことは創刊当座から予想されたことで、いずれは「研究」を主にした「別冊」を刊行したいと考えておりましたし、何人かの方にはお声をかけて、最近のご研究をご発表下さるようにお願いして参りました。

そして創刊五年目にして、やっと「夏潮 別冊 虚子研究号」発刊に漕ぎ着けました。

今後、「夏潮」本誌とは別に、年に一冊のペースで、「別冊虚子研究号」を刊行して行ければと考えております。また虚子文学の研究に興味のある方、志のある方なら、「夏潮」誌友に限らず、どなたとでも共に虚子研究に励みたいと存じます。ご一読の上ご意見ご感想など賜れば幸甚ですし、もう一歩進んで、日ごろのご研鑽の成果をご寄稿いただければ、これに勝る幸せはありません。

なお今後、でき得る限りは「非売品」として多くの方にお配りしたく存じておりますが、そうも行かぬ事態が訪るるやも知れません。そうなりました節には何卒よろしく、一段の応援をいただきたく存じます。


目次
一、 虚子の子規追善井上泰至2
二、 「虚子の書簡」から 栗林圭魚12
三、 虚子連句私解 大島富朗20
四、 「白露物語」基礎研究前北かおる32
五、 新出資料、虚子「三畳と四畳半」自筆原稿から本井英46
六、 記念館だより   


ISBN978-4-939116-80-3 C0092


第五巻のはじめに(2011年8月号)

第五巻のはじめに               本井 英

  「夏潮」第五巻第一号、八月号をお届けします。 創刊から四年、「夏潮」は順調な歩みを進めて参りましたが、この間わが日本は大きな試練の時代を迎えました。さきの大震災で命を落とされた方々のご冥福を心よりお祈りしますとともに、いまだに行方の判らない方々の安否が案ぜられます。また命こそ助かったものの家屋、財産をすっかり奪われてしまった方々には何とお慰めすべきか言葉がありません。さらに福島第一原発の事故は未だに収束の目途も立たず、地元で生活の自由を奪われた皆さん、並びに風評被害等に遭われた方々のお気持ちを察すると心が痛みます。

こんな中でもわれわれはこの国土、山川草木、鳥獣虫魚を俳句に諷詠することで造化を讃えようと思います。いな、このような時だからこそ花鳥を諷詠することでこの国土を、さらには生きている我々を意味深いものとしようではありませんか。後ろを振り返るばかりでなく、前を向いて、立ち現れる季節を迎えましょう。

さて「夏潮」はこの八月、初めての「別冊 虚子研究号」を発刊することができました。これは虚子研究を志す方なら誰にでも開かれた誌面ですが、勿論「夏潮」の仲間の虚子研究を期待してのものです。大いに「別冊」を利用していただきたく存じます。

また九月からは「夏潮 第零句集シリーズ」が始まります。こちらは若手に発奮してもらうための企画です。「夏潮」で育った若者たちが、将来、花鳥諷詠の道をさらに切り開いてくれることを期待してのものです。多くの会員の応援を切望します。

夏潮について

『夏潮』(主宰:本井英)は、2007年8月に創刊された、「ひたすら虚子を求め、さらに虚子の求めた彼方を探る」月刊の俳句雑誌です。 紹介に代えて主宰の言葉から:

「俳句は、まず楽しいものだと考えています。俳句会や吟行で「季題」と出合い、それらを敬し、賛美するとき。造化の大きな運行に身を任せつつ十七音に心を委ねるとき。そして句仲間の最初の読者として、その作品にふれるとき。」(平成19年8月創刊号『発刊にあたって』)
「出会うことのなかった大虚子に憧れて、ひたすら虚子を求め、さらに虚子の求めた彼方を探る。これが私の俳句への姿勢、「夏潮」 の立場です。これからも、そのための誌面作り、活動を目指します。誌友諸兄姉におかれましても、ぜひ私と手を携えて「虚子世界への旅」へ踏み出されんこと を切望いたします。」(平成20年8月号『第二巻のはじめに』)
「俳句は決して「競う」ための器ではありません。一人一人が与えられた「生」をより充実して生きていくための器、いや伴侶という 方がふさわしいでしょう。 … 虚子没後五十年を過ぎた今、真摯で愛情に富んだ虚子研究が待望されています。「研究」などと大袈裟にいわなくても、静かにしかし情熱的に「虚子の世界」を 慕う集団として、ご一緒に研鑽を重ねようではありませんか。」(平成22年8月号『第四巻のはじめに』)