雑詠(2021年9月号)

海沿ひの海抜表示浜大根		飯田美恵子
浜へ出る路地のここにも松葉菊
寄せ墓の隙を余さず杉菜長け
山の名がバスの終点懸り藤

子規の書のだんだん斜め若葉冷		小野こゆき
ぼうたんのくづほれてゐるひなたかな	児玉和子
牡丹の風に崩るるとき一瞬		町田 良
すれ違ふ上りケーブル夏帽子		木田睦月

雑詠(2021年8月号)

北窓に一本桜絵のごとし		小山久米子
顔に背に泥を飛ばして畦を塗る
畦塗つて泥のにほひの父帰る
チューリップ唱歌のやうに色並べ

河原まで人下りてをり花曇		山内裕子
フェラーリのタイヤ見てゐる豆の花	中島富美子
えご散つてくるりともせで止まりけり	田中 香
水を見る蟷螂遂に水に入る		藤永貴之

雑詠(2021年7月号)

暗渠より運河へ注ぐ水温む		塩川孝治
ぬぬぬぬつと春泥に脚とられけり
たつぷりの水と光をパンジーへ
梅散るや枝先ぴくと震はせて

母の息の止まるを待てる遅き日を		木山夕景
明日は去る町を歩みて卒業す		山内裕子
菜の花や漁港の先に弁財天		冨田いづみ
春浅しぷしゆんと閉まる桐箪笥 		渡邉美保

雑詠(2021年6月号)

キュルキュルと目白喜び臥龍梅		岡﨑裕子
武蔵野の用水細し春浅し
殊の外この梅愛でし父であり
直売の菠薐草を娘の分も

赤銅の鎌首は藪枯の芽		稲垣秀俊
菜の花や厩舎の窓に馬の貌		大山みち子
巻道があつて木五倍子の花下げて	児玉和子
三誓願立て玉葱を吊しけり		山口照男

雑詠(2021年5月号)

屋根雪をスノーダンプで切る落とす	青木百舌鳥
逃げてゆく群たのもしや初雀
初雀梅に五大羽薔薇に二羽
書割のごとき磴へと初詣

小豆煮て小さき鏡をひらきたり		礒貝三枝子
ライオンの指先の如枇杷の花		原 昌平
役無しで和了れるルール三ケ日 	矢沢六平
幾度も列の尾につき年用意		小野こゆき