麻服のしわも景色のバーの客 松島盛夫 管理地と立看板や茂り中 南天の米粒ほどに咲きにけり 結葉や上膊をはふ蟻ひとつ 草茂るかつて裁判官官舎 児玉和子 夏服の上に童顔ドアボーイ 梅岡礼子 白服やなぎさホテルの在りし頃 町田 良 夏桔梗緩衝緑地手入れ良き 柳沢木菟
雑詠(2025年10月号)
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麻服のしわも景色のバーの客 松島盛夫 管理地と立看板や茂り中 南天の米粒ほどに咲きにけり 結葉や上膊をはふ蟻ひとつ 草茂るかつて裁判官官舎 児玉和子 夏服の上に童顔ドアボーイ 梅岡礼子 白服やなぎさホテルの在りし頃 町田 良 夏桔梗緩衝緑地手入れ良き 柳沢木菟
熱狂を忘れて秋の雲となる 前北かおる 夕雨の雲きれぎれに秋桜 豊年や千曲の支流みな太く 新品のピザ窯来る秋日和 飛び来たる花髪切虫を胸に受く 青木百舌鳥 麦の秋国定村の保育園 小沢藪柑子 向う岸の青蘆叢の屛風なす 児玉和子 薔薇えりて十一本をつつましむ 松島盛夫
夢の中で起きて働く朝寝かな 浅野幸枝 庭干しの運動靴に花の塵 とめどなく水琴窟へ花の雨 白シャツを干して叩いて風光る 法名で呼びかけてみる朧かな 村田うさぎ 山火事の手前の山の桜かな 根岸美紀子 句碑に小さく「万」と一文字暮の春 児玉和子 バス通り沿ひに見返り柳かな 冨田いづみ
モノレール枯木の中を辷り出す 大山みち子 囀や長き参道ゆつくりと とりどりのスワンボートに春兆す 武家門の日あたるところ福寿草 衰ひの車返しの大桜 児玉和子 春風や池のここより川はじまる 青木百舌鳥 四面体の中に透けたる雛あられ 田中 香 春泥をヨ避けし足跡たどりけり 原 昇平
湿り気の残る大気や梅香る 山内裕子 うとうととしてゐる背中春隣 穏やかに晴れ梅白し空青し 若布刈舟四人がかりで引き上ぐる 取り込みし干し物温し日脚伸ぶ 都築 華 登園もあと幾日よいぬふぐり 原 三佳 漂へる遠き野焼の匂ひかな 塩川孝治 春水のさらさらさらと御料地を 梅岡礼子