在宅の仕事納めの静かな日 藤森荘吉 年忘瀬音に近き奥座敷 港町番地で探す冬の景 冬の海巨船ぽつかり現れる 日だまりの石に抱きつき冬の蠅 松島盛夫 グリーンカーテン枯れて小学校の冬 児玉和子 こなごなの落葉にほへる朝の路 冨田いづみ 発掘の予告看板穭田に 杉原祐之
雑詠(2024年4月号)
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在宅の仕事納めの静かな日 藤森荘吉 年忘瀬音に近き奥座敷 港町番地で探す冬の景 冬の海巨船ぽつかり現れる 日だまりの石に抱きつき冬の蠅 松島盛夫 グリーンカーテン枯れて小学校の冬 児玉和子 こなごなの落葉にほへる朝の路 冨田いづみ 発掘の予告看板穭田に 杉原祐之
冬ぬくし博物館にキッチンカー 遠藤真智子 十一月の日射し鯨のモニュメント 薄暗きみあかし二灯神の留守 曇天の薄日に傾ぐ石蕗の花 栗を煮る夫ありし日のやうに煮る 牧野伴枝 すつくりと枯れし姿も男郎花 渡邉美保 焼藷にある重心のごときもの 田中 香 瓢の笛音階なさぬ音ばかり 山内繭彦
片づけの手際よきこと里祭 矢沢六平 芳名を張り出す係里祭 松明の赤さだんだん虫送 はざ棒を芯に藁にほ組み上がる 茶の花の思はせぶりに俯きて 天明さえ 歩まざりし路を思へり秋の声 児玉和子 軒低く五十八の数寄屋暮の秋 柳沢木菟 旅にある夫をおもひて月の虹 冨田いづみ
妻逝きて物音しない夜長かな 田中金太郎 芒野や疾く過ぎゆける雲の影 金太郎飴も売られて菊まつり ビルの灯の上にしづかにけふの月 遊園地消えてどりこの坂の秋 釜田眞吾 病む人に夜は長しよ茶立虫 山内裕子 水澄むや夢に終はりし一人旅 牧原 秋 くつきりとキレツト切処見ゆる秋の晴 武居玲子
八月や深き疲れに眼コ閉ぢ 児玉和子 八月の夢に逢ふ人みな故人 駒下駄や踊り疲れて戻り来し 路地路地を踊り流して夜明けまで 片陰より人の出て来る青信号 飯田美恵子 丸き背にふと触れてみし生身魂 田中 香 白芙蓉手入れ届きし資料館 江本由紀子 打水の旧道沿ひに質屋かな 冨田いづみ