雑詠」カテゴリーアーカイブ

雑詠(2024年6月号)

映画館出て春雨に濡るゝかな    園部光代
春雨や楽器ケースと花束と
春浅し初めて入る喫茶店
つんつんとクロッカスの芽枯葉中

つぎつぎに臨時便来て大試験    小沢藪柑子
薫風に盲導犬は貌あげて      山口照男
雪塊の割れ口青を宿したる     磯田和子
孕雀の重さうな涙滴形       稲垣秀俊

雑詠(2024年5月号)

本土より四国山地や初明り		梅岡礼子
初明り島うすうすと浮かみくる
庭ごとに柚子のたわわや旧街道
冬菜畑母屋と納屋に挟まれて

弥撒終へし神父囲みて御慶述ぶ		原田淳子
縦に引く箒清しや五月場所		山口照男
鰹節のかをりがずつと南風の町		藤永貴之
ふるさとの橋の上なる御慶かな		田中 香

雑詠(2024年3月号)

冬ぬくし博物館にキッチンカー		遠藤真智子
十一月の日射し鯨のモニュメント
薄暗きみあかし二灯神の留守
曇天の薄日に傾ぐ石蕗の花

栗を煮る夫ありし日のやうに煮る	牧野伴枝
すつくりと枯れし姿も男郎花		渡邉美保
焼藷にある重心のごときもの		田中 香
瓢の笛音階なさぬ音ばかり		山内繭彦