雑詠(2021年1月号)

残りページ気にしつつ読む良夜かな	馬場紘二 
浮き上がる一面の白蕎麦の花 
クラシックホテルの庭の良夜かな 
お隣につい声掛ける良夜かな 

天の川見に行くバスに乗り込める		飯田美恵子 
背のファスナー開いたままに蟬の殻	小山久米子 
故郷に妻子ある人鯊日和		矢沢六平 
黒松に熊笹赤松に芒			天明さえ

雑詠(2020年12月号)

遡る波を見てをり橋涼み		山内裕子
夕蟬の河原に潮の満ちて来る
溝萩や池の小島にそれらしく
新涼の風萩に吹き槇に吹き

雲の峰練習船が出航す		宮田公子
すこやかに青田となりぬケルネル田	児玉和子
墓洗ふ苗字の底に指を入れ		河村雅子
半夏生油膜広ごる船溜り		江本由紀子

雑詠(2020年11月号)

語りたき人の少なし端居して		岩本桂子
夜光虫オールのしぶきとび散りて
句碑までの近道なりし草いきれ
空晴れて身ほとりの尚梅雨じめり

諍ひを避けきし髪を洗ひけり		前田なな
昧爽の夏川に手を浸しみる		町田 良
風鈴の路地を曲がればさらに路地	児玉和子
青芝に五本立てある譜面台		梅岡礼子

雑詠(2020年10月号)

利根川の夜明けを告げて行々子		北村武子
川幅を埋めて滔々夏の川
柿の花こぼるるまゝに駐車場
サボテンの針のあはひに花五つ

さみだれの一日を妻の枕もと		井上 基
椋一羽道路に蜥蜴打ちつけて		田中温子
夏川の浅きを鼈の進む		児玉和子
海霧に生れ姫白蝶といふ名前		稲垣秀俊

雑詠(2020年9月号)

ぼうたんの散るごとに身を軽うする	田中 香
擬宝珠やブロック塀に菱の窓
傾がざるものなかりけり花擬宝珠
側溝に根付きし草や五月雨
ビオトープ溢れしめたる五月雨

ぽろぽろぽろぽろたんぽぽへ山羊の糞	前田なな
寝そべれば仔馬は薄し草青し		冨田いづみ
香のもとへ辿り着きたり桐の花		三上朋子
よるべなき身や満開の花仰ぐ		久保光子