雑詠(2021年4月号)

冬ざれの野は荒浜に続きけり		町田 良
山茶花の白の淨らに散りてなほ
浮寝鳥吹かれ溜れる船溜
密やかにけものの匂ひ山眠る
古井戸の底はちひさき枯野かな	武居玲子
川底のかたちのままに水涸れる	小沢藪柑子
我が町に二つの流れ冬霞		小川美津子
鶲来て声をかけたき近さかな		早稲田園

雑詠(2021年3月号)

雪しろのだだ広ごりに海へ出づ		藤永貴之
しら梅に萼の紅の滲みたる
芍薬の芽のはじめからまくれなゐ
エンジン音あれば耕しをりにけり

銅鐸の如くにビルや夜の椿		前北かおる
寒葵黄泉に通じてをりぬべし		稲垣秀俊
ドリカムを聞きつゝ松の手入れかな	永田泰三
石塀より地に冬蝶の影移る		武居玲子

雑詠(2021年2月号)

蜂追ひの紙縒りキラキラ秋日和		矢沢六平
売りに来てそのまま茸談義かな
子等のあと親がつきゆく虫送
東京へ出て行つたきり柿たわわ
鷹匠や食はせる時に鷹を見ず

夫がゐて家あたたかく十三夜		冨田いづみ
甘藷畑に島の全校生徒かな		梅岡礼子
朝礼の正方形を鳥渡る		黒田冥柯
畑とも道ともつかず韮の花		飯田美恵子

雑詠(2021年1月号)

残りページ気にしつつ読む良夜かな	馬場紘二 
浮き上がる一面の白蕎麦の花 
クラシックホテルの庭の良夜かな 
お隣につい声掛ける良夜かな 

天の川見に行くバスに乗り込める		飯田美恵子 
背のファスナー開いたままに蟬の殻	小山久米子 
故郷に妻子ある人鯊日和		矢沢六平 
黒松に熊笹赤松に芒			天明さえ

雑詠(2020年12月号)

遡る波を見てをり橋涼み		山内裕子
夕蟬の河原に潮の満ちて来る
溝萩や池の小島にそれらしく
新涼の風萩に吹き槇に吹き

雲の峰練習船が出航す		宮田公子
すこやかに青田となりぬケルネル田	児玉和子
墓洗ふ苗字の底に指を入れ		河村雅子
半夏生油膜広ごる船溜り		江本由紀子