雑詠(2022年1月号)

母を待つ子らに鈴虫鳴きにけり		原田淳子
四肢伸ばす黒猫長し秋暑し
門ひらき奥まで見ゆる萩の家
爽やかや区の旗なびく美術館

おのがじし活計のありて浦の秋		小沢藪柑子
栞りたる頁にもどる夜の秋		岩本桂子
台風の名残の風に物を干す		黒田冥柯
蜩のエリザベスサンダースホーム		梅岡礼子

雑詠(2021年11月号)

夕菅に低く流れて湖の霧		山内裕子
夕菅に山小屋の灯の零れをり
川茶屋の梁に蠅取紙吹かれ
千羽鶴梅雨湿りして地蔵堂

島の子に手をひかれつつ夜光虫		冨田いづみ
風に乗る芋殻の火の粉発たれしか	前田なな
夕菅の島の小径を桟橋へ		梅岡礼子
駒草に吹き下ろす風火山から		小沢藪柑子

雑詠(2021年10月号)

半夏生花の組紐垂らしたり		児玉和子
合歓の花ここらが谷戸のどんづまり
谷戸奥の植田の脇の芋の畝
昼顔や軍港巡る船が出る

ゆるく飛び浅葱斑蝶は見よとこそ		藤永貴之
買物をしてきたるらし夜釣人		山内裕子
駒鳥や馬鹿尾根のつけから急で		釜田眞吾
昼顔や看板残る文具店		原田淳子

雑詠(2021年9月号)

海沿ひの海抜表示浜大根		飯田美恵子
浜へ出る路地のここにも松葉菊
寄せ墓の隙を余さず杉菜長け
山の名がバスの終点懸り藤

子規の書のだんだん斜め若葉冷		小野こゆき
ぼうたんのくづほれてゐるひなたかな	児玉和子
牡丹の風に崩るるとき一瞬		町田 良
すれ違ふ上りケーブル夏帽子		木田睦月

雑詠(2021年8月号)

北窓に一本桜絵のごとし		小山久米子
顔に背に泥を飛ばして畦を塗る
畦塗つて泥のにほひの父帰る
チューリップ唱歌のやうに色並べ

河原まで人下りてをり花曇		山内裕子
フェラーリのタイヤ見てゐる豆の花	中島富美子
えご散つてくるりともせで止まりけり	田中 香
水を見る蟷螂遂に水に入る		藤永貴之