薫風や鉋の背より鉋屑 山口照男 糸蜻蛉息をころすと言ふことも シャープペン押して引つ込め梅雨深し 梅雨の森大聖堂のごと静か 又夜が来て薄氷を張つてゆく 北村武子 住職は炬燵に死亡届置く 藤野 澪 ある晴れた日に流氷が遠くから 小沢藪柑子 恢恢と土に影あり春隣 青木百舌鳥
雑詠(2022年6月号)
コメントを残す
薫風や鉋の背より鉋屑 山口照男 糸蜻蛉息をころすと言ふことも シャープペン押して引つ込め梅雨深し 梅雨の森大聖堂のごと静か 又夜が来て薄氷を張つてゆく 北村武子 住職は炬燵に死亡届置く 藤野 澪 ある晴れた日に流氷が遠くから 小沢藪柑子 恢恢と土に影あり春隣 青木百舌鳥
吾が帽子かぶせてやりぬ磯遊 前北かおる 桂村御前山村懸り藤 菫草日裏のままの磨崖仏 小上がりに五月人形乳をやる 整備士も営業マンも雪を搔く 浅野幸枝 ライブ後の反省会のおでんかな 磯田知己 七種粥頂き終の住家なる 伊藤八千代 眠る山さめぬ一句を残されし 岩本桂子
おでん屋にゐるかと見ればをりにけり 児玉和子 白湯吞んで老いにけらしな年送る 一病が二病となりて年の行く 大寺の 欄 に倚り年惜む 街師走舟和にあんこ玉買うて 風待の花筏とぞ申すべき 藤永貴之 雪まみれの犬のごとくに気動車来 稲垣秀俊 年行くや今日一日と生きてきて 山内裕子 何もかものつぺらぼうに年流る 天明さえ
返納を前にドライブ暮の秋 田中幸子 砦跡一足毎に飛蝗散り 街路樹の変はり南京櫨紅葉 山茶花の白紅混じり落葉籠 良き子等と良き父母の七五三 塩川孝治 急磴を谷へおりゆく寒さかな 田中温子 顔を見ず話せるどうし水温む 藤永貴之 ケアの車止りて居りぬ花八手 岩本桂子
敗荷の鉢の並びぬ坂の道 藤田千秋 雲間より日の差しくれば鶸の鳴き 穴まどひ蛇籠の上に身を曝し 曳船の音遠ざかる秋の暮 葉のあをと檸檬のあをと分かたざる 信野伸子 地震一つありし朝の麦を踏む 山口照男 四万過ぎた頃から林檎赤くなり 稲垣秀俊 夕日さす赫奕(カクヤク)として柘榴かな 武居玲子