雑詠」カテゴリーアーカイブ

雑詠(2025年2月号)

初鶏にパッと点りし一戸かな		藤永貴之
星や惜し霜や惜し年明けそむる
山裾と山裾のあひ初茜
霜の野にさしわたりたる初日かな

皂角子の莢を伝ひて雨雫		山内裕子
長き夜や目藥六本チェスの如		礒貝三枝子
木犀の葉軸を守るやうに咲き		宇佐美美紀
寒鰤のつける醬油を弾きけり		山口照男

雑詠(2025年1月号)

思ひ出す紫菀の咲けば泊雲忌		長浜好子
芒剪る今宵の月に捧げんと
桔梗や若く逝きにし友の墓
鬼灯を手にして昔話して

ひもじさや芋虫が身を捩りたる		稲垣秀俊
震災忌橋にそれぞれ名前ある		小沢藪柑子
濠の水に揉まれ春日のくらげなす	山本道子
副賞は新米といふ句会かな		山内繭彦

雑詠(2024年12月号)

島へ行くバスは空つぽ初嵐		宮田公子
蜑路地の軒の底さを夏燕
傾ける納屋にかぶさり凌霄花
夏帽子杭にかかりしまま三日
半時の遊船なれど手を振つて		塩川孝治
鶏の声の細れる残暑かな		町田 良
みしみしと雷雲の押し寄せて来る	山内裕子
おくずかけずんだ作りてお盆かな	幕田かれん

雑詠(2024年11月号)

梅雨烏かあ北一輝顕彰碑		田中温子
剝落の仁王の像や梅雨深し
青胡桃やうやく雨の上がりさう
蛇の目と五十センチの間合ひなる 

帰省して小中高と連れ回し		矢沢六平
夏空も分かち大陸分水嶺		今井舞々
畳みたるごと噴水の落ちにけり		田中 香
岩かどにかくれあらはれ三十三才	藤永貴之

雑詠(2024年10月号)

しばらくは掃くこと勿れ沙羅の花	根岸美紀子
緑蔭の玉川上水橋いくつ
花楝花殻なるも実となるも
雨上り紫陽花日和とはなりぬ

職人の声が屋根より五月晴		前田なな
建具屋の御道具棚の金魚かな		足立心一
花びらの豊かに薄し寒牡丹		山本道子
無花果のひそかに太り梅雨深し		町田 良