雑詠」カテゴリーアーカイブ

雑詠(2024年1月号)

妻逝きて物音しない夜長かな		田中金太郎
芒野や疾く過ぎゆける雲の影
金太郎飴も売られて菊まつり
ビルの灯の上にしづかにけふの月

遊園地消えてどりこの坂の秋		釜田眞吾
病む人に夜は長しよ茶立虫		山内裕子
水澄むや夢に終はりし一人旅		牧原 秋
くつきりとキレツト切処見ゆる秋の晴	武居玲子

雑詠(2023年12月号)

八月や深き疲れに眼閉ぢ		児玉和子
八月の夢に逢ふ人みな故人
駒下駄や踊り疲れて戻り来し
路地路地を踊り流して夜明けまで

片陰より人の出て来る青信号		飯田美恵子
丸き背にふと触れてみし生身魂		田中 香
白芙蓉手入れ届きし資料館		江本由紀子
打水の旧道沿ひに質屋かな		冨田いづみ

雑詠(2023年11月号)

掬はれて名前を貰ひ屑金魚		村田うさぎ
夕虹や恩師のその後杳として
夏潮やフェリー発ちたる波止寂と
車内騒つく鬼やんま乗り込みて

鮎釣の傍を漕ぎ来るラフティング	羽重田民江
木槿咲く遺品整理に通ふ道		岡﨑裕子
冬霞香取海のたゞ中に		信野伸子
八百段登りて後の茅の輪かな		浦上ひづる

雑詠(2023年10月号)

競馬場のスタンド見ゆる植田かな	冨田いづみ
鷺がまた翔んでゆくなり青田波
咲いてはやかよふ風ありねむの花
梅天の旧中川の水まんまん
若竹を抜けくる風のやはらかく

ラ・フランス切れば古楽器めきにけり	山口照男
十薬の広がるままや老の庭		岩﨑眞理子
門灯の丸く点りて守宮鳴く		山内裕子
野晒しの石貨めく干草ロール		稲垣秀俊