雑詠(2021年6月号)

キュルキュルと目白喜び臥龍梅		岡﨑裕子
武蔵野の用水細し春浅し
殊の外この梅愛でし父であり
直売の菠薐草を娘の分も

赤銅の鎌首は藪枯の芽		稲垣秀俊
菜の花や厩舎の窓に馬の貌		大山みち子
巻道があつて木五倍子の花下げて	児玉和子
三誓願立て玉葱を吊しけり		山口照男

雑詠(2021年5月号)

屋根雪をスノーダンプで切る落とす	青木百舌鳥
逃げてゆく群たのもしや初雀
初雀梅に五大羽薔薇に二羽
書割のごとき磴へと初詣

小豆煮て小さき鏡をひらきたり		礒貝三枝子
ライオンの指先の如枇杷の花		原 昌平
役無しで和了れるルール三ケ日 	矢沢六平
幾度も列の尾につき年用意		小野こゆき

雑詠(2021年4月号)

冬ざれの野は荒浜に続きけり		町田 良
山茶花の白の淨らに散りてなほ
浮寝鳥吹かれ溜れる船溜
密やかにけものの匂ひ山眠る
古井戸の底はちひさき枯野かな	武居玲子
川底のかたちのままに水涸れる	小沢藪柑子
我が町に二つの流れ冬霞		小川美津子
鶲来て声をかけたき近さかな		早稲田園

雑詠(2021年3月号)

雪しろのだだ広ごりに海へ出づ		藤永貴之
しら梅に萼の紅の滲みたる
芍薬の芽のはじめからまくれなゐ
エンジン音あれば耕しをりにけり

銅鐸の如くにビルや夜の椿		前北かおる
寒葵黄泉に通じてをりぬべし		稲垣秀俊
ドリカムを聞きつゝ松の手入れかな	永田泰三
石塀より地に冬蝶の影移る		武居玲子

雑詠(2021年2月号)

蜂追ひの紙縒りキラキラ秋日和		矢沢六平
売りに来てそのまま茸談義かな
子等のあと親がつきゆく虫送
東京へ出て行つたきり柿たわわ
鷹匠や食はせる時に鷹を見ず

夫がゐて家あたたかく十三夜		冨田いづみ
甘藷畑に島の全校生徒かな		梅岡礼子
朝礼の正方形を鳥渡る		黒田冥柯
畑とも道ともつかず韮の花		飯田美恵子