映画館出て春雨に濡るゝかな 園部光代 春雨や楽器ケースと花束と 春浅し初めて入る喫茶店 つんつんとクロッカスの芽枯葉中 つぎつぎに臨時便来て大試験 小沢藪柑子 薫風に盲導犬は貌あげて 山口照男 雪塊の割れ口青を宿したる 磯田和子 孕雀の重さうな涙滴形 稲垣秀俊
雑詠(2024年6月号)
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映画館出て春雨に濡るゝかな 園部光代 春雨や楽器ケースと花束と 春浅し初めて入る喫茶店 つんつんとクロッカスの芽枯葉中 つぎつぎに臨時便来て大試験 小沢藪柑子 薫風に盲導犬は貌あげて 山口照男 雪塊の割れ口青を宿したる 磯田和子 孕雀の重さうな涙滴形 稲垣秀俊
本土より四国山地や初明り 梅岡礼子 初明り島うすうすと浮かみくる 庭ごとに柚子のたわわや旧街道 冬菜畑母屋と納屋に挟まれて 弥撒終へし神父囲みて御慶述ぶ 原田淳子 縦に引く箒清しや五月場所 山口照男 鰹節のかをりがずつと南風の町 藤永貴之 ふるさとの橋の上なる御慶かな 田中 香
在宅の仕事納めの静かな日 藤森荘吉 年忘瀬音に近き奥座敷 港町番地で探す冬の景 冬の海巨船ぽつかり現れる 日だまりの石に抱きつき冬の蠅 松島盛夫 グリーンカーテン枯れて小学校の冬 児玉和子 こなごなの落葉にほへる朝の路 冨田いづみ 発掘の予告看板穭田に 杉原祐之
冬ぬくし博物館にキッチンカー 遠藤真智子 十一月の日射し鯨のモニュメント 薄暗きみあかし二灯神の留守 曇天の薄日に傾ぐ石蕗の花 栗を煮る夫ありし日のやうに煮る 牧野伴枝 すつくりと枯れし姿も男郎花 渡邉美保 焼藷にある重心のごときもの 田中 香 瓢の笛音階なさぬ音ばかり 山内繭彦
片づけの手際よきこと里祭 矢沢六平 芳名を張り出す係里祭 松明の赤さだんだん虫送 はざ棒を芯に藁にほ組み上がる 茶の花の思はせぶりに俯きて 天明さえ 歩まざりし路を思へり秋の声 児玉和子 軒低く五十八の数寄屋暮の秋 柳沢木菟 旅にある夫をおもひて月の虹 冨田いづみ