主宰近詠(2024年4月号)

胴の間に   本井 英

島裏を訪ふは久々日脚伸ぶ

姉妹ふけて母似や桜餅

鎌倉より北鎌倉は春浅く

気動車の黄色焼野にさしかかり

ヘルメット配り野焼の人数かな

枯蓮を渫ひひきずり上げてある

浅春の神門に彫る梅と牛

梅の坂宮地芝居のありし世も

会釈してお針子仲間針供養

針供養に連ぬる傘の色いろいろ


蕗の薹ひねり上げては摘みすすめ

着地してはづむ烏や草萌ゆる

胴の間に若布つみあげ戻りくる

紅梅の楉の花のさらに濃き

奏でむと指でなぶりて花馬酔木

犬ふぐり群るるともなく健やかに

恋猫のいつまで留守の猫ちぐら

東風ゆたかなりタラップを下りゆけば

東風の野を舎人ライナー疾走す

満腔に東風ぞ永久気管孔

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