課題句「フリージア」 坂 廣子 選 八丈富士の裾野ひろやかフリージア 冨田いづみ フリージア摘んで抱へて島のバス 片言の英語通ずやフリージア 前田なな フリージア抱へて辿る夜の道 足立心一 フリージア古民家カフェの庭先に 中島富美子 フリージア生けて寂しさ消えにけり 北尾千草
課題句(2024年4月号)
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課題句「フリージア」 坂 廣子 選 八丈富士の裾野ひろやかフリージア 冨田いづみ フリージア摘んで抱へて島のバス 片言の英語通ずやフリージア 前田なな フリージア抱へて辿る夜の道 足立心一 フリージア古民家カフェの庭先に 中島富美子 フリージア生けて寂しさ消えにけり 北尾千草
季題は「仕事納め」。『虚子編新歳時記』、『ホトトギス編新歳時記』共に、「御用納」はあるが「仕事納め」は季題として立てていない。角川『俳句大歳時記』では「御用納」の傍題として立項、例句として宮坂静生の<揺れゐたり仕事納めの弥次郎兵衛>の一句を掲げる。「御用納」となれば官公庁、あるいは古くは朝廷、幕府での業務を納める日。民間あるいは武家でない者が使うのはやや憚られたものであろう。そこで自然と「仕事納め」という言葉が使われ始めた、と思われる。一句の味わい処は「在宅の」。普通に「家に在る」の謂で永らく使われてきた言葉で、「在宅起訴」などという物騒な言葉もある。ところが近年の「コロナ騒ぎ」から「在宅勤務」が大幅に導入され、多くの勤め人達が、無理に通勤しない状態が広まってくると、一つの「暮らし方」として認知されるようになり、掲出句などの状況も誠に納得のいくものとなった。全員が通勤していた頃、「仕事納め」となれば、気心の知れた同志で「一杯やって」から家路に着くのが、当たり前だったものだが。静かにパソコンの電源を切って「終わり」という事になるのであろう。「静かな日」という表現に、一日の静けさも思われて、「令和の句」であると実感させられた。季題に随順した健全な人生を思った。(本井 英)
在宅の仕事納めの静かな日 藤森荘吉 年忘瀬音に近き奥座敷 港町番地で探す冬の景 冬の海巨船ぽつかり現れる 日だまりの石に抱きつき冬の蠅 松島盛夫 グリーンカーテン枯れて小学校の冬 児玉和子 こなごなの落葉にほへる朝の路 冨田いづみ 発掘の予告看板穭田に 杉原祐之
胴の間に 本井 英 島裏を訪ふは久々日脚伸ぶ 姉妹ふけて母似や桜餅 鎌倉より北鎌倉は春浅く 気動車の黄色焼野にさしかかり ヘルメット配り野焼の人数かな 枯蓮を渫ひひきずり上げてある 浅春の神門に彫る梅と牛 梅の坂宮地芝居のありし世も 会釈してお針子仲間針供養 針供養に連ぬる傘の色いろいろ
蕗の薹ひねり上げては摘みすすめ 着地してはづむ烏や草萌ゆる 胴の間に若布つみあげ戻りくる 紅梅の楉の花のさらに濃き 奏でむと指でなぶりて花馬酔木 犬ふぐり群るるともなく健やかに 恋猫のいつまで留守の猫ちぐら 東風ゆたかなりタラップを下りゆけば 東風の野を舎人ライナー疾走す 満腔に東風ぞ永久気管孔