健脚組ここで別るる富士薊 岩本桂子 菜虫とる雫するほど手の濡れて 屈みたるまま一畝の菜虫とる 見下しにちらと湖見え富士薊 小さき庭つまらなさうにとんぼ去る 湯ざめして人形一つ撃ち落とす 近藤和男 プレス屋の夜食国際色豊か 矢沢六平 大年の没りぎはの日の射しきたり 藤永貴之 形見分け終はりし午後や小鳥来る 都築 華
雑詠(2023年1月号)
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健脚組ここで別るる富士薊 岩本桂子 菜虫とる雫するほど手の濡れて 屈みたるまま一畝の菜虫とる 見下しにちらと湖見え富士薊 小さき庭つまらなさうにとんぼ去る 湯ざめして人形一つ撃ち落とす 近藤和男 プレス屋の夜食国際色豊か 矢沢六平 大年の没りぎはの日の射しきたり 藤永貴之 形見分け終はりし午後や小鳥来る 都築 華
楢枯に沫雪とまりそめにけり 藤永貴之 柿の秋筑紫次郎を南に 子供等のやうや落葉の駆け回る 剪定の了りたる冬紅葉かな 旭光の燃え広がりて冬の雁 前北かおる 秋水の辷りて迅き魚道かな 青木百舌鳥 三日目の干梅の肩ゆるみたる 梅岡礼子 玉と散りカイ塊を連ねて滝落つる 児玉和子
魞かしぎ堅田の岸の茂りけり 小野こゆき 梅雨灯す千体仏に千の厨子 堂守の煎餅座布団梅雨深し 閻魔堂守団扇ひらひら道を説く 母に向き母から戻り扇風機 田中 香 心あての山百合咲けり崖の道 町田 良 老鶯の心底楽しさうに鳴く 永田泰三 枸杞の実にともり澄みたる火輪かな 藤永貴之
空梅雨や空に平たき雲ばかり 梅岡礼子 二十本の包丁研ぎて梅雨晴間 黒塀の外にも洩れて竹落葉 草刈器唸り立てるを宥めつつ 巢箱から蛇いうぜんと木に移り 坂 廣子 夜行列車短夜を抜け到着す 塩川孝治 乾坤の俄に暗み夕立来 岩本桂子 溝浚ふ横を空港バス走る 山内裕子
どつさりと高く黄色く棕櫚の花 原 昌平 祭髪淡路町より乗つて来し 麦の秋埼玉県に広さあり 腥き日本橋川夏夕 風音の中に見つけし小げらかな 前北かおる 病む人の大いにあらひ召されけり 藤永貴之 するすると茶筒に滑りゆく新茶 深谷美智子 カーネーションと松寿司届く日曜日 釜田眞吾