冬ぬくし博物館のキッチンカー  遠藤真智子

 季題は「冬ぬくし」。「冬暖」の傍題である。立冬が過ぎているのに、まだまだ秋の続きのような日和で、風もないような状況である。「キッチンカー」という車両はいつ頃から、こんなに身近に見かけるようになったのであろうか。小型トラックを改造して、少々の煮炊きなら出来るようになっているらしい。東京のオフィス街などでは働いている人の数と食堂の定員のバランスがとれて居ないためか、若いサラリーマン達が「キッチンカー」で温かいランチを買って、近くの公園などで食べるというのも近年よく見かける景色だ。さてこの句では、その「キッチンカー」が「博物館」のフロントスペースに登場しているのである。

 比較的ゆったりしたスペースにゆったりと建っていることの多い「博物館」。その一画に駐めた「キッチンカー」の前に二三人のお客が並んでいる。なるほど「冬ぬくし」という気分が伝わってくる。たまたま通りかかった作者の目には納得のいく景として見えたのであろう。平凡な景色の中に、季節のゆったりした推移が見えて来る。(本井 英)

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