魞かしぎ堅田の岸の茂りけり  小野こゆき

 季題は「茂」、夏の季題である。「魞」について、「魞さす」という春の季題があるが、刺してから時間が経って「かしいで」いる「魞」は季題にはならない。「堅田」は滋賀県琵琶湖の西岸にある町。湖水交通の要衝の地であり「浮御堂」などの名所でも知られている。湖畔を中心に木立も少なくなく、夏になれば頼もしく鬱蒼と青く茂り合うというのである。湖水に刺された「魞」は時季を過ぎて、やや衰えを見せ、中には傾くものも見かける。そんな湖面を撫でて過ぎて行く湖風も心地良いが、湖畔の「茂」は、夏の日ざしの中で、勢いを増し、季節の活力をじわじわと見せつけ初めている。「春」から「夏」への主役の交代を自ずと見せてくれた一句であった。(本井 英)

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