雑詠」カテゴリーアーカイブ

雑詠(2023年7月号)

踏青や矢倉岳(ヤグラ)金時山(キントキ)晴れ渡り	児玉和子
国分寺跡の青きを踏みにける
勢揃ひして葉牡丹の茎立てる
ふらここを漕げばきゆるきゆる鎖鳴る

不揃ひの石段険し立浪草	前田なな
家毎に若木を育て梅の里	北村武子
埼玉の群馬に近き暑さかな	前北かおる
講堂の天井高し卒業式	矢沢六平

雑詠(2023年6月号)

布袋尊に晩白柚ある福巡り		山本正紀
「撫おかめ」の左頰撫で初詣
堂前にはちきれさうに牡丹の芽
散りてなほ白梅の萼紅の濃き

口角を上げる体操春を待つ		山内裕子
巣立ちたる子等の部屋にも福の豆	村田うさぎ
石榴割れ解剖絵図のごときかな		山本道子
西暦にいつしか慣れて初暦		前田なな

雑詠(2023年5月号)

ばば様のお部屋の前の実南天	宮田公子
棲み古りてここがふるさと年明くる
ひと畑を縁取るやうに仏の座
松過のあたたかければ海を見に

蕗の薹天地しづかに動き初む		伊藤八千代
初鶏や田はしろがねに明けゆける	三上朋子
二日はや鵜と遊びゐる鵜匠かな		近藤作子
ゆつくりと触れて行くなり寒の鯉	藤田千秋

雑詠(2023年4月号)

極月の吊広告のハワイかな      山内裕子
蔦枯れて日を吸ひ込みぬ大谷石
白樺の榾焚いてみせ爐の主
夜半には雪となるらし蕪汁

甲板にひとり残りて冬の月      梅岡礼子
向き合うて六十回目の御慶      牧原 秋
杜父魚の掌めける胸鰭よ       磯田和子
バギーより見上ぐる春の空どんな   信野伸子