主宰近詠(2024年6月号)

 礒鵯の唄        本井 英

礒鵯が讃へて花の朝かな

朝桜かなひいやりと咲きつらね

日の色に染められてをる朝桜

手術することを選びて朝桜

訪ひて椿の島の椿餅

若きらが(ソボ)(クラ)へり椿餅

椿餅猫の温さの膝にあり

東京が近づく花の車窓かな

汐引きし橋杭に貼る花の屑

花房に重さありけり掌でつつみ


捨て積みの蛸壺に蠅生まれつつ

翅華奢に生まれたてなる蠅ならめ

独居の灯ぽつと八十八夜かな

春水がしゆつと小便小僧より

瞳孔をこじ開くる赤赤躑躅

春風や重箱堀に吹きたまり

大鷭も機嫌良からんキョンと啼き

二輪草仕舞ひの日々の雨の今日

枯れ色の添ひつつ貝母潰えつつ

朝毎の礒鵯の唄夏ちかし

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