踏青や矢倉岳金時山晴れ渡り 児玉和子

 季題は「踏青」。傍題には「青きを踏む」「あをきふむ」などがあるが、「踏青」と漢語風に表現するとやや硬い感じと共に、古代以来の年中行事としての「野遊び」の気分も漂う。「矢倉岳金時山」を「やぐら・きんとき」と読ませるのは短詩型としては無理のない省略で、実際、山に親しんでいる人々の間では、そのように呼ばれているのであろう。丁度相模の国の中ほどから眺めると駿河の国との国境稜線の方角に、まことに特徴的な山容をもって突出している二峰で一度教わったら忘れられない。いよいよ春になったという喜びと、これからの季節を山野に親しもうとの作者の楽しい心の裡も思われる。(本井 英)

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