課題句 「白魚」 田中 香 選 白魚汲む水面の光もろともに 磯田和子 白魚網上げてふるひて十尾ほど 曳きあげて月のいろなる白魚かな 冨田いづみ 白魚を月の海より掬ひけり 喜多村純子 湯に放つ白魚たちまち色を得し 山内裕子 水掬ふごと白魚を掬ひけり 渡邉美保
課題句(2023年2月号)
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課題句 「白魚」 田中 香 選 白魚汲む水面の光もろともに 磯田和子 白魚網上げてふるひて十尾ほど 曳きあげて月のいろなる白魚かな 冨田いづみ 白魚を月の海より掬ひけり 喜多村純子 湯に放つ白魚たちまち色を得し 山内裕子 水掬ふごと白魚を掬ひけり 渡邉美保
季題は「夜寒」、秋の季題である。同じく秋の季題として「朝寒」、「やや寒」、「うそ寒」、「肌寒」、「そぞろ寒」があり、さらに「冷まじ」、「身に入む」という季題もある。春と共に、最も過ごし易い季節である「秋」にかげりが見えてきて、いよいよ厳しい、事によると命に関わる危険もある「冬」を迎えんとする「不安」が、これだけ多くの類似季題を生んだ原因に違いない。
「夜寒」は、暖房が要るというほどでもないが、夜が更けるつれて肩から背中、あるいは足許辺りに「寒さ」を覚えること。作者は、何か書き物(パソコンのキーボードでは無く、筆記用具を用いて紙に記されたもの)をしていたのであろう。漸く「書き了へて」、静かに読み返している。そして「掌」は自然と両膝に置かれていたというのである。書かれたものは、ともかく襟を正して筆記すべきものであったに違いない。目上に対する「手紙」などが考えられよう。誤字脱字は無いか、礼を失した表現は無いか。謙虚に「文」と向き合っている姿勢が「膝へ自づと掌」である。(本井 英)
書き了へて夜寒の膝へ自づと掌 前田なな レール替ふ夜業ライトを膨らませ 浮草のすき間〳〵の水澄めり とんぼ吾に早く行けよと顎しやくる 窓に我が顔が映りて秋の暮 山内裕子 一瞬にして街ぢゆうが秋の暮 塩川孝治 氷柱折り沸かすコーヒー避難小屋 山口照男 大橋の真中に佇ちて秋の暮 山内繭彦
甘える鷹を 本井 英 鐘楼の画然とあり萩刈れば 萩の刈り口や楕円に真円に 三つありて一つ小さき柚釜かな 沼の冬せまる山とて無かりけり さきがけの白鳥の胸うす汚れ 白鳥は胸まろやかに風に浮く 島宮へ橋の長さよ七五三 帯解の癇症なるは誰に似し 袴着の悪態つくがたのもしき 髪置のへらりへらりと笑ふばかり
柴漬に舷あさき小舟かな 一歩踏み出して鷹匠鷹放つ 餌合子の鳴ればたちまち鷹もどる 鷹匠や甘える鷹を甘えさせ 黄葉してなほも零余子をこぼさざる 森の冬かな雨音につつまれて 敷きつめし落葉に湛へ潦 小鳥どちちらちら渡る雨の枝 初鴨の相語るあり雨の糸 金魚なるかや翡翠の嘴に赤