月別アーカイブ: 2023年3月

手術終了

10日に無事手術終了。只今ICUから戻りました。暫く静養します。皆様にご心配をおかけして「言葉」もありません。一日も早く復帰します。英


課題句(2023年3月号)

課題句 「芹」		原 昌平 選

芹の水この辺はまたクレソンが		藤永貴之
芹の上にわが影落ちぬ蟹現れぬ

芹摘みし手を高く振り芹も見せ		牧野伴枝
野歩きの昼のラーメン芹入れて	塩川孝治
芹生ふる府県境の峠かな		小沢藪柑子
芹の香の真つ只中に芹刻む 		前北かおる					

橡の実のぱつかと割れて転がれる  山本道子

 季題は「橡の実」。虚子編『新歳時記』には、「栃の実である。円錐状をして三裂し、その中に光沢のある褐色の大きな種子がある。この種子から澱粉を採つたり橡餅等をつくつたりする。」とある。「橡餅」と言えば信州の観光地などでは、よくお土産などにされる品だが、あれは餅米などと搗き合わせた高級品で不味いわけがない。巴里の街路樹として有名な「マロニエ」は「西洋橡」。その実は日本の「橡」と同じ様な種子が入っており、まさに「マロン」なわけだが、毒があって食えぬ(灰汁抜きの技術がないと駄目らしい)ということになっている。フランスの「栗」は「シャテニエ」、こちらは立派な毬のある実である。

 その「橡の実」が橡の木立の下に、幾つも落ちていたのであろう。その「果肉」が割れて中の種子が転がり出ている様子を作者は「ぱつかと」と表現した。一句の手柄は勿論この「ぱつかと」であることは間違いない。「ぱかつと」、ではないのである。「ぱかつと」は「音」が主だが、「ぱつかと」は「姿」が主である。「種子」が転がり出た後の、空ろになった実の内側の曲面まで見えてくる。(本井 英)

雑詠(2023年3月号)

橡の実のぱつかと割れて転がれる	山本道子
空ラの胴と翅を遺して蟬骸
仙人草剣ケ峰より富士現れて
蟬時雨森を出づれば墓所のあり

チーチチとチチと遠のき囀れる	信野伸子
まはりこみ鶺鴒恋の羽ひろぐ		藤永貴之
戸田芝の穂の紫に冬の雨		児玉和子
一点の色は翡翠冬の雨		天明さえ

主宰近詠(2023年3月号)

主は来ませり      本井 英

島山にして絶海に眠るなる

深々と切通しあり山眠る

お薬師さま里へ下ろして山眠る

山眠れば歩荷仕事も無くなりて

炉話に指失ひし事故のこと

炉明りに膝逞しき娘かな

顔見世や昔は見えし男山

営林署の冷蔵庫より山鯨

大皿を覆ひて赤し牡丹肉

連れだつとなく離れざる鳰


鳰の目の冷淡さうに見ゆるとき

源流とて落葉の下の水の音

棕櫚の芽ぞ落葉畳を青く抽き

靴の腹で掻いて楽しき落葉かな

蜷擱坐したり冬日は天にあり

山雀の声の遠さよ枯木谷

鎌倉のほんに今年の冬紅葉

冬紅葉母の独りの墓に降る

蒲の穂は崩れほつれて戦ぐなる

主は来ませりと千両も万両も