主宰近詠(2023年2月号)

甘える鷹を   本井 英

鐘楼の画然とあり萩刈れば

萩の刈り口や楕円に真円に

三つありて一つ小さき柚釜かな

沼の冬せまる山とて無かりけり

さきがけの白鳥の胸うす汚れ

白鳥は胸まろやかに風に浮く

島宮へ橋の長さよ七五三

帯解の癇症なるは誰に似し

袴着の悪態つくがたのもしき

髪置のへらりへらりと笑ふばかり


柴漬に舷あさき小舟かな

一歩踏み出して鷹匠鷹放つ

餌合子の鳴ればたちまち鷹もどる

鷹匠や甘える鷹を甘えさせ

黄葉してなほも零余子をこぼさざる

森の冬かな雨音につつまれて

敷きつめし落葉に湛へ潦

小鳥どちちらちら渡る雨の枝

初鴨の相語るあり雨の糸

金魚なるかや翡翠の嘴に赤