甘える鷹を 本井 英 鐘楼の画然とあり萩刈れば 萩の刈り口や楕円に真円に 三つありて一つ小さき柚釜かな 沼の冬せまる山とて無かりけり さきがけの白鳥の胸うす汚れ 白鳥は胸まろやかに風に浮く 島宮へ橋の長さよ七五三 帯解の癇症なるは誰に似し 袴着の悪態つくがたのもしき 髪置のへらりへらりと笑ふばかり
柴漬に舷あさき小舟かな 一歩踏み出して鷹匠鷹放つ 餌合子の鳴ればたちまち鷹もどる 鷹匠や甘える鷹を甘えさせ 黄葉してなほも零余子をこぼさざる 森の冬かな雨音につつまれて 敷きつめし落葉に湛へ潦 小鳥どちちらちら渡る雨の枝 初鴨の相語るあり雨の糸 金魚なるかや翡翠の嘴に赤