雑詠」カテゴリーアーカイブ

雑詠(2024年11月号)

梅雨烏かあ北一輝顕彰碑		田中温子
剝落の仁王の像や梅雨深し
青胡桃やうやく雨の上がりさう
蛇の目と五十センチの間合ひなる 

帰省して小中高と連れ回し		矢沢六平
夏空も分かち大陸分水嶺		今井舞々
畳みたるごと噴水の落ちにけり		田中 香
岩かどにかくれあらはれ三十三才	藤永貴之

雑詠(2024年10月号)

しばらくは掃くこと勿れ沙羅の花	根岸美紀子
緑蔭の玉川上水橋いくつ
花楝花殻なるも実となるも
雨上り紫陽花日和とはなりぬ

職人の声が屋根より五月晴		前田なな
建具屋の御道具棚の金魚かな		足立心一
花びらの豊かに薄し寒牡丹		山本道子
無花果のひそかに太り梅雨深し		町田 良					

雑詠(2024年9月号)

近づいてゆくうれしさに桐の花		田中 香
花桐をマイクロバスで潜りけり
高原へカーブ幾つも桐の花
桐の花高しダム湖に映らざる

月皓々花烏瓜また皓々		常松ひろし
忽然と屋根より高く夏の蝶		松島盛夫
銅門常盤木門と城若葉		飯田美恵子
沢風にあさぎまだらの浮き憩ふ		藤永貴之

雑詠(2024年7月号)

たんぽぽの丈の低さも浜の宿	山内裕子
温室に雨の音聞く椄木かな
生徒の名つけて椄木の鉢並び
一日を草に座りて諸子釣

春泥につなぎたる手を離しけり	飯田美恵子
ギプスより出づる指先春寒し	田中幸子
街路樹の根に捨ててある花氷	藤永貴之
通りますと軽トラ通る春の泥	山口禎子