空梅雨や空に平たき雲ばかり 梅岡礼子 二十本の包丁研ぎて梅雨晴間 黒塀の外にも洩れて竹落葉 草刈器唸り立てるを宥めつつ 巢箱から蛇いうぜんと木に移り 坂 廣子 夜行列車短夜を抜け到着す 塩川孝治 乾坤の俄に暗み夕立来 岩本桂子 溝浚ふ横を空港バス走る 山内裕子
雑詠(2022年10月号)
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空梅雨や空に平たき雲ばかり 梅岡礼子 二十本の包丁研ぎて梅雨晴間 黒塀の外にも洩れて竹落葉 草刈器唸り立てるを宥めつつ 巢箱から蛇いうぜんと木に移り 坂 廣子 夜行列車短夜を抜け到着す 塩川孝治 乾坤の俄に暗み夕立来 岩本桂子 溝浚ふ横を空港バス走る 山内裕子
どつさりと高く黄色く棕櫚の花 原 昌平 祭髪淡路町より乗つて来し 麦の秋埼玉県に広さあり 腥き日本橋川夏夕 風音の中に見つけし小げらかな 前北かおる 病む人の大いにあらひ召されけり 藤永貴之 するすると茶筒に滑りゆく新茶 深谷美智子 カーネーションと松寿司届く日曜日 釜田眞吾
酸実の花日影にはかに夏めきぬ 青木百舌鳥 酒粕は浪乃音なり山葵漬 いささかの蕨をとりて濃き日ざし 来し方を見て葉桜の明るさよ 顔のなきマネキン怖し原爆忌 山口照男 生きるとは凄まじきこと鳥交る 塩川孝治 貰はれて小猫の名前替りけり 北村武子 庭師の手歴然として若緑 馬場紘二
後手に長き梶棒春潮へ 柳沢木菟 上水は再び開渠草青む タカヒク高低をなぞり一面すみれ草 浜近く潮目や春の相模湾 学食へ挨拶をして卒業子 冨田いづみ 白南風や佐世保駅即佐世保港 藤永貴之 天竜の奥まで春の明るきや 渡辺深雪 鴨引いて鯉のあぎとふばかりなる 山内繭彦
薫風や鉋の背より鉋屑 山口照男 糸蜻蛉息をころすと言ふことも シャープペン押して引つ込め梅雨深し 梅雨の森大聖堂のごと静か 又夜が来て薄氷を張つてゆく 北村武子 住職は炬燵に死亡届置く 藤野 澪 ある晴れた日に流氷が遠くから 小沢藪柑子 恢恢と土に影あり春隣 青木百舌鳥