競馬場のスタンド見ゆる植田かな  冨田いづみ

 季題は「植田」。早苗を植えてまだ間も無い頃の田圃である。「代田」との違いは、勿論、植えて有るか無いかの違いで判りやすいが、「青田」との違いは微妙である。筆者は「空」が映り込む間は「植田」。水面が見えなくなるのが「青田」というぐらいの目安で考えている。そう考えると「植田」という時期はそう長くは無いかも知れない。「競馬場」のスタンドは馬場の遠くまで見渡す必要もあって、なかなか高い建物が多いようであるが、筆者は、この句の作者ほどには「競馬場」を訪れたことが無いので、詳しくは知らない。脳裏に浮かぶのは「右に見える競馬場、左はビール工場」といった歌詞ぐらいだが、あんな処に「田圃」はあったかしら?と思うと、いささか不安にもなる。

 あるいは「その道の達人」になると「新潟」とか「福島」とかの競馬場まで進出するのかも知れないが、さすがにそれらの「競馬場」のロケーションについて筆者の知るところではない。ともかく一面に広がった「植田」越しに「競馬場のスタンド」が仰がれ、良く見ると「田の面」にちらちらとそれらしい色が映っているのである。初夏の気持ちいい風が戦いでいる。(本井 英)

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