掬はれて名前を貰ひ屑金魚  村田うさぎ

 「金魚」は夏の季題。大きさも値段も「ピンキリ」で「蘭鋳」などとなると一尾何万円もするらしい。一方、金魚掬い用の安物はまさに「屑金魚」、もっとひどいのになると他の動物や魚の為の「生き餌」として売り買いされるものもあるらしい。さて本句の「屑金魚」は「掬はれて」とあるように「金魚掬い」のための「金魚」だ。そんな「金魚」だったが、家に連れて帰られて、水槽に放たれると、なんとなく家族の一員のように扱われ、「名前」を付けてもらって、「餌」を貰うような幸運を得たというのである。まさに「赤いべべ着た 可愛い金魚 おめめさませば 御馳走するぞ」の境遇だ。心優しい「子供」とその家族の振る舞いを、あっさりと表現していながら、よく考えると、「生きる」とか「運命」とかいう重い言葉が背後にちらちら見える句になっていると思えた。(本井 英)

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