混群 本井 英 皀角子の実を角となし髥となし なほしばし古酒をもて嗜みにけり 色鳥や我が見てをるを知つてをり 今朝も来るこの色鳥の名を知らず ひねもすを脚立乗り降り林檎穫る 群れ鹿や牧のあなたを流れける 釦止めても衿を立てても泠まじや 黄に咲くや鉄道草と蔑まれ 山雀の神籤や固く巻かれたる 山雀の神籤ちりりと鈴も鳴り
仰ぎつつ混群のこと語る人木犀の莟そろへて香るなく 神田川をいま天牛が飛んで渡る ビルの底に首塚はあり秋の暮 銚釐とはそもなつかしや温め酒 ご存命かどうかは知らず温め酒 どつさりと渋柿といふたたずまひ 葛の実や華やかならずあからさま 誅殺の世とてありけり谷戸の秋 十二所の名もゆかしさや里の秋