主宰近詠(2024年8月号)

参じ得ず   本井 英

雷間近にはかに何か裂ける音

病棟の夕餉の西瓜賽の目に

眠れぬは小事ながらも明易し

病棟の北窓広し明易き

白衣ぱりぱり教授回診夏の朝

着陸機陸続東京の空は灼け

溽暑待つ退院なれどよろこばし

退院の我を迎へて赤手蟹

退院をして潮の香とほととぎす

へろへろとあり甚平のふくらはぎ


甚平の太もも薄くやはらかし

界隈の蚊に待たれをり我が甚平

雨脚の見ゆるほとりの半夏生

白薔薇や紅うすうすとフリルなし

蠅虎に眼光と言へるもの

我が声を我が忘れつつ梅雨籠

「ねえ」と声かけてもみたし梅雨ふかし

虎が雨句会とてあり参じ得ず

沖に籠める雲真つ黒や虎が雨

虎が雨ぱらりと過ぎしばかりにて

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