参じ得ず 本井 英 雷間近にはかに何か裂ける音 病棟の夕餉の西瓜賽の目に 眠れぬは小事ながらも明易し 病棟の北窓広し明易き 白衣ぱりぱり教授回診夏の朝 着陸機陸続東京の空は灼け 溽暑待つ退院なれどよろこばし 退院の我を迎へて赤手蟹 退院をして潮の香とほととぎす へろへろとあり甚平のふくらはぎ
甚平の太もも薄くやはらかし 界隈の蚊に待たれをり我が甚平 雨脚の見ゆるほとりの半夏生 白薔薇や紅うすうすとフリルなし 蠅虎に眼光と言へるもの 我が声を我が忘れつつ梅雨籠 「ねえ」と声かけてもみたし梅雨ふかし 虎が雨句会とてあり参じ得ず 沖に籠める雲真つ黒や虎が雨 虎が雨ぱらりと過ぎしばかりにて