創刊以来「夏潮」の表紙を毎号飾って下さっている清水操先生の個展のご案内を頂きました。
「夏潮」の表紙を飾った作品も展示されるようです。皆様ぜひ奮ってお運びください。
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課題句「陽炎」 梅岡礼子 選 対岸の遊糸の解けし夕べかな 原 昇平 陽炎やタラップ車ゆつくり停まる 巻狩のありし裾野や陽炎へる 山本道子 陽炎に端といふものなかりけり 小沢藪柑子 陽炎の竿にやうやく中りくる 藤田千秋 陽炎やこんな処に山羊放ち 本井 英
亡夫のジャケツ着て居心地良かりけり 小山久米子 穭田や植田のやうに生え揃ひ 物言はぬ口に一匙鶏雑炊 今日よりは一人と思ふ冬の朝 冬麗の空へユーカリ伸び上がる 児玉和子 夫けふは競馬へ勤労感謝の日 冨田いづみ 手の届く所に「い・ろ・は・す」と蜜柑 磯田知己 接木してからしのやうな薬かな 前北かおる
季題は「ジャケツ」。『虚子編新歳時記』、『ホトトギス編新歳時記』ともに季題としての記載は無いが、内容的には寒い季節の上着としての認識は広く行き渡っており、季題として扱うことに抵抗はない。因みに『角川大歳時記』(二〇〇六年版)では「ジャケット」として掲出。傍題として「ジャケツ」・「カーディガン」・「ジャンパー」を掲げている。衣料の分野は殊に流行り廃りが激しく、季題の認定は難しい領域ではあるが、掲出句の場合はその「手触り」まで伝わってくるので、季題として充分な実感のあるものとして扱った。一句は「亡夫」とあることから、大凡の状況は察せられ、容易ならざる心の内も充分に推量出来る。大切なご主人を亡くされて暫く経って迎えた「冬」であろう。寒さを防ぐ爲に、久しく着る人の無かった「ジャケツ」に、なんとなく腕を通されたのだろう。永年見慣れた柄の「ジャケツ」を「着てみる」と、思ったより「重く」「暖かかった」。俄に「亡夫」の俤が蘇り、「心地良い」と思えたというのである。こうして俳句として「亡夫」を詠まれることが、どれほどご主人の供養になることか、拝読する方も心に感ずるものがあった。(本井 英)