課題句「ハンカチ」 今井舞々 選 差し出せるハンカチーフを借りまどふ 岩本桂子 ハンカチや恋の手段の一番手 田口松柏 ハンカチを差し出す男受く女 根岸美紀子 ハンカチをそつと差し出す人のゐて 岡部健二 さりげなく出すハンカチの所作に惚れ 園部光代
課題句(2022年7月号)
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課題句「ハンカチ」 今井舞々 選 差し出せるハンカチーフを借りまどふ 岩本桂子 ハンカチや恋の手段の一番手 田口松柏 ハンカチを差し出す男受く女 根岸美紀子 ハンカチをそつと差し出す人のゐて 岡部健二 さりげなく出すハンカチの所作に惚れ 園部光代
季題は「春潮」。天候によって、また地方によってもさまざまではあるが、何となく穏やかな、それでいて力強い海原が脳裏に浮かぶ。「梶棒」は舟の場合は「舵」を操るための「棒」。つまり板状の「ラダー」に取り付けた棒状の「ティラー」である。長い方が「梃子の原理」で力は軽くて済むが、操作範囲は広くなる。そして「舵」は概ね船尾に付いているから「後手」で操作しなければ、進行方向への注視は出来ない。
と、ここまで句解をしてきて、この句が実に無駄なく、無理なく「ある動的な場面」を描写出来ていることに思い至った。そして、一方景色としてはまことに平凡な、ありきたりなものであることも確認した。勿論、全てを包み込む「情」は「春潮」が我々にもたらす「やはらかい」何かなのだが、そのこととは別に、この句が私を惹きつける原因は、「ことば」の無駄のない、無理のない、「組み上がり」なのではあるまいか。「花鳥諷詠」・「客観写生」と虚子は言ったが、その中には、こうした「ことば」たちの、「コケ脅かし」や「品を欠く意匠」から最も遠い、一見平凡に見えながらも、実質的に機能した「言葉の組み上がり」の上品さがあるのではなかろうか。当然ながら、それらが作者の、「物欲しげ」とは正反対の「上質な心根」の上に成り立っていることは言うまでもあるまい。(本井 英)
後手に長き梶棒春潮へ 柳沢木菟 上水は再び開渠草青む タカヒク高低をなぞり一面すみれ草 浜近く潮目や春の相模湾 学食へ挨拶をして卒業子 冨田いづみ 白南風や佐世保駅即佐世保港 藤永貴之 天竜の奥まで春の明るきや 渡辺深雪 鴨引いて鯉のあぎとふばかりなる 山内繭彦
おへそが見えて 本井 英 牡丹の蕾緑を湛へそむ 高架線ホームにありて花の昼 鯉沈むとき花筏巻きこめる クロネコのリヤカー便や雪柳 花曇ウエットスーツ干しつらね
寝ころんでゐる老人も磯あそび 葉牡丹の長じてつひひに咲けりけり 一身を煽りて海月ややすすむ 智恵貰玉虫色の紅さして 山繭や常念坊も姿消し
娘さんのおへそが見えて蝶の昼 八重桜雨にほとびて揺るるなく すまり咲く山椒の黄の静かさよ 岩煙草あつかんべえと若葉垂れ 方丈に隣る典座の遅桜
茶を啜る音の大きく蓬餅 員数のととのひたりし蔦若葉 ボクシングジムの四隅の扇風機 山吹の蕚幾十散り残り 枝の蛇日のぬくとさに身じろがず