おへそが見えて 本井 英 牡丹の蕾緑を湛へそむ 高架線ホームにありて花の昼 鯉沈むとき花筏巻きこめる クロネコのリヤカー便や雪柳 花曇ウエットスーツ干しつらね
寝ころんでゐる老人も磯あそび 葉牡丹の長じてつひひに咲けりけり 一身を煽りて海月ややすすむ 智恵貰玉虫色の紅さして 山繭や常念坊も姿消し
娘さんのおへそが見えて蝶の昼 八重桜雨にほとびて揺るるなく すまり咲く山椒の黄の静かさよ 岩煙草あつかんべえと若葉垂れ 方丈に隣る典座の遅桜
茶を啜る音の大きく蓬餅 員数のととのひたりし蔦若葉 ボクシングジムの四隅の扇風機 山吹の蕚幾十散り残り 枝の蛇日のぬくとさに身じろがず