主宰近詠(2019年3月号)

はれがまし  本井英

小諸・富山 三句

消火器の赤のきはだち庵の冬 ぎくしやくと融雪栓の噴きはじむ 鰤待ちて沖にしづかに定置網 菰巻に顔を寄すれば香りけり 明るさや時雨やどりの池ほとり





櫨の実のわつさわつさと生りきそひ

花八手菌糸のごとくたくましく

海苔篊をすり抜けてくる風ぬるし

小ぶりなる防災倉庫島の冬

泉水にやつて来てをり都鳥





ワイパーが拭へば次の霙かな

水仙や腓の日ざし楽しさに

顔見世や舞妓まじりにはれがまし

顔見世の役者が朝の食堂に

ボロ市の真只中に住まひせる





混ぜ垣やまぬかれがたく茶は花を

掃き寄すや銀杏黄葉の粉々も

充電のごとく冬日に身をさらし

ひとり来て心はなやぎ冬紅葉

柚子三つ惑星のごと湯にうかび

主宰近詠(2019年1月号)

201901_p04-05_近詠_入稿

主宰近詠(2018年12月号)

201812_p4-5近詠入稿

主宰近詠(2018年11月号)

南なだりの   本井 英

梅を干し了へたる笊を干してある

梅花藻の花端正に白に黄に

藻の花を水しわしわになりて梳く

真清水に薬罐 が漬けてありけるよ

川底に浪皺の影涼しけれ




雨あとの茎のつやつや滑莧

新涼の風我が耳を澄ませゆく

新藷をさぐり掘りせし痕ならめ

はだかりて発電パネル鳳仙花

しもつけの咲かなんとして濃かりけり




野の風に夏帽の鍔べのべのす

湿原に兄貴然たり油がや

のうぜんや村の暮らしを愛し棲み

岳麓の南なだりの豊の秋

江ノ電の涼しさは極楽寺のあたり




ばらまいて白ならぬなきヨットの帆

色見本のやうやデイゴは赤極め

片陰に呑みこまれたる蜑が路地

秋濤の炸裂しては霧らひては

秋濤の飛沫かはして磯鵯は

主宰近詠(2018年10月号)

はまばう・はまごう   本井英

土塊が割れ新藷の赤のいろ

小暗きをさらに下れば氷室跡

氷室口溶岩(ラヴァ)をいかつく積み上げて

片舷にかたむくボート夜光虫

さし入れて五指のかたちに夜光虫




覆ひして大護摩壇や油照

駐車場に朝の体操月見草

貧相な男が佇てる月見草

開ききりて二十幾弁紅蓮

踝の高さにひらき凌霄花




駒草の影を朝日がいま作る

夏潮へと延べあるレール造船所

はまばうの黄のやはらかく新しく

はまごうの咲きひろごりて静かなる

夏蝶や朱の斑を見よと翅ひろぐ




病ひには触れず日焼を褒めくれし

こもろ日盛俳句祭 四句

虚子庵の天井黒し夏の雨 虚子が棲み紅花守りし黴の庵 涼風や改札柵をあふれ吹き 山百合のくだけちらばり嵐あと