主宰近詠(2024年1月号)

商人は継がず   本井 英

照葉いま水陽炎のとらへたる

穭田となりて家墓あからさま

今年はも夜風あたたかお酉さま

きらきらと黄やら赤やら熊手かな

商人(アキンド)は継がず老いけり酉の市

枯るる野の消えて車内の映りそめ

脚立から降りて見上げて松手入

松手入枝をゆすつて終りけり

掌の温みのこる瓢の実受けとりぬ

寺領なる幾百張りの女郎蜘蛛


柊の花を伝ひて雨雫

酔ひ醒めや真夜の時雨に虹かかり

なだらかに海へ傾き大根畑

風が出て漁に出ぬ日は大根引く

子が吐きしミルクの匂ひ冬暖か

地にちかく地を見下ろして茶の花は

冬薔薇に沿うてどりこの坂曲がる

防風の茎の赤さも冬に入る                                   

白といふ色の豊かさ桃吹けり

冬浪のかそけき日々の冬薔薇    

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください