よろづ華美には 本井 英 茶立虫学芸員を天職と 茶立虫日付変はつてをりにけり 二日月に幅といふものありにけり 二日月舐めたら溶けてしまひさう ありながら潮に映らず二日月 街の秋まことしやかに巣箱掛け 秋雲の全体移り止まぬかな 月の道烏帽子岩へとさしわたり 気動車に二十パーミル犬子草 生返事ばかり枝豆喰ひながら
老人の日とて他人事ならずをり 駅チャイムは希望の轍秋の風 秋風につつまれ細き撞木かな 蚊の闇を閉じ込めてある円位堂 運河てふ小駅のありて秋の雨 館の秋よろづ華美には亘らざる 荻の穂の花火のやうにひらくとき 茶の実ごつごつ茶の蕾ぷちぷちす 川沿ひの屋並今宵も月佳けん サップとて秋潮につつ立つ人等