主宰近詠(2023年9月号)

海の家   本井 英

朝涼の浜を領してビルの影

青く塗り桃色に塗り海の家

海の家より起き出してくる男

海の家見知らぬ国旗掲ぐるも

貸浮輪にマジックで書く屋号かな

日焼して大胸筋が自慢にて

夏潮を航く五馬力か二馬力か

海の家にも片蔭の生まれそむ

遠泳の赤灯台の今日は遠し

夏潮や水を怖るる病後の身


中干しの真つ只中の青田かな

向日葵の一 本愉快そうでもなく

土は灼け石さらに灼け道をしへ

ほの暗く氷室の神の祀らるる

草刈機途絶えてよりの村の音

ビーバーの刈り残したる野萱草

赤ぞれのぞれの由々しや雲は夏

夏雲や群馬側から湧きのぼり

柳蘭蕾の塔を誇るかな

闌くるとは色を得ること吾亦紅

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