海の家 本井 英 朝涼の浜を領してビルの影 青く塗り桃色に塗り海の家 海の家より起き出してくる男 海の家見知らぬ国旗掲ぐるも 貸浮輪にマジックで書く屋号かな 日焼して大胸筋が自慢にて 夏潮を航く五馬力か二馬力か 海の家にも片蔭の生まれそむ 遠泳の赤灯台の今日は遠し 夏潮や水を怖るる病後の身
中干しの真つ只中の青田かな 向日葵の一本愉快そうでもなく 土は灼け石さらに灼け道をしへ ほの暗く氷室の神の祀らるる 草刈機途絶えてよりの村の音 ビーバーの刈り残したる野萱草 赤ぞれのぞれの由々しや雲は夏 夏雲や群馬側から湧きのぼり 柳蘭蕾の塔を誇るかな 闌くるとは色を得ること吾亦紅