投稿者「taizo」のアーカイブ

実もなりてゴーヤの日除け公民館 伴枝 (泰三)

 随分寒くなりました。皆さんはいかがおすごしでしょうか。

 季題は、ゴーヤ苦瓜で秋。日除けを季題とすると夏の句となるが、題としては、ゴーヤを取りたい。近年グリーンカーテンと称し、ゴーヤを植えることがはやっているそうである。公民館にも日除けのためにゴーヤを植えてみた。するとすくすく育ち、実を結んだ。まだまだ、葉もしっかりと茂り、残暑もしっかり防いでくれている。

 さて、この実はいったい誰のものなんだろう。勝手に取って食べるわけにもいかない。公的な機関がゆえの悩みが面白い。

工場を定時に上り田を植うる 祐之 (泰三)

 一気に寒くなりました。皆さんはいかがお過ごしでしょうか。

  季題は田植。兼業農家の暮らしの一こま。定時は5時か5時半ぐらいか、初夏の空はまだまだ明るい。工場には残業している人もいるんだろうが、この人は定時に上がり、そして先祖伝来の田を植える。田んぼも工場の直ぐ近くにあるんだろう。そういえば、工場は田んぼに囲まれている。そんな景色と暮らしが見える句だ。

丸木橋渡れば急な登山道 やすし (泰三)

 またもや久しぶりの更新となってしまい申し訳ない気持ちでいっぱいの泰三です。

 季題は、登山道で登山の傍題。夏の題である。山中の川に丸木橋が架かっている。ここまでの道は、比較的ゆったりとした道であった。しかし、橋を渡ると急に険しい坂が続いているようだ。ここから先に進むには一寸した覚悟が必要。「渡れば急な」という中七のリズムが良く、とんとんと気持ちよく登っている様子が目に浮かぶ。

表札に紫陽花首をたもげをり 典子 (泰三)

 季題は紫陽花。仮名で書くと「あぢさゐ」と、何とも風流で美しい花である。が、放っておくとこんもりと山の様に茂ってしまう。この句の場合も、玄関前にちんまりと植えたつもりの紫陽花が育ちすぎて表札を隠してしまった。切ってしまうには勿体ないし、どうしたものか。細い茎にまるまると花をつける紫陽花はなるほど首をもたげているようにも見える。

 

勝手口の立て付け悪しなめくぢり 和子 (泰三)

 季題はなめくぢり、夏の季語のナメクジの事。じめじめした誠に気持ちが悪い生き物である。私事であるが、数年前に前北氏からもらった苺の苗を全部だめにされてしまった個人的な恨みもある。退治するにはビールが有効だとか。全く贅沢な生き物である。

 勝手口とは、台所に通じる裏口で、ここから出てゴミを捨てたりする。主にその家に住むものが生活のために使うのみで、客人が出入りすることはまずない。だからこの句のように、多少の立て付けが悪くてもそのままの状態にされていることが多い。ナメクジが出ているということは、湿度がかなり高い日なのだろう。その湿気を吸って普段よりますます勝手口が言うことをきかない。叩いたり、もしくは蹴ったりして、ドアを開け閉めしているのかも知れない。そんな人間の営みとは無関係になめくぢりは何ともおっとりとしたものである。