片づけの手際よきこと里祭  矢沢六平

 季題は「里祭」、「秋祭」、「村祭」とも呼び、秋の季題である。「祭」が夏のもの、都会のものであるのに対して言う。村の顔見知りだけで執り行い、祭客とて大して集まるわけでもないものではあるが、それなりのクライマックスはあって、神輿の渡御なども無事終了。その後は粛々と各員「持ち場」を「片付け」て行く。その行動がまことに「手際」がよく、あっと言う間に「祭」以前の状態に復していったというのである。各地の「夏祭」の多くが観光という側面を意識したイベントになりつつあるのに好対照をなしていることに気づいた一句である。都会で育ち、現代そのものを生きてきた作者が、一転、地方の生活に身を委ねて年月を過ごし、至りついた知恵が見つけてくれた「一場面」であったと言えよう。(本井 英)

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