止め掻き 本井英
向日葵の天辺がまだ覗きこめ さくと引く漆鉋の音かわく 漆掻真一文字に口結び 古溝の黒々とあり漆掻 漆伐り倒し止め掻き仕る
滴りのたまらず紐となるあたり 滴りや陳 者 山の心斯く 蜜豆の求肥や色もやはらかく 蜜豆や女の絆侮れず 赤富士へ別荘村を出はづれし
赤富士や釣人すでに湖の上 箱庭に牛小屋があり牛がをり 箱庭の船頭口を開けたまま 箱庭の小瀧に耳をすませたり 氷川丸の煙突低し丘茂り
昂らぬ音こそ佳けれ造瀧 大人しくしてゐる松を手入れせる 暑に耐ふや所作緩慢を心がけ 冷房のバスの窓より町を人を 蜩の鳴き加はれば沼を辞す