日別アーカイブ: 2013年1月24日

大波と小波とあつて虫の声 昌平 (泰三)

 季題は、「虫」で秋。秋の夜に聞こえてくる、虫たちの声である。涼しい中、聞こえてくる声は美しく。いつまでも聞いていたいものである。

 さてこの句。理屈で言えば、音波である。しかし、この句は、虫の音が、大波や小波が寄せ来る音のようにあたかも虫の音が聞こえた様を、感じたとおりを句にしたのだろう。なるほど言われてみたら、たくさんの虫が一斉になく「大波」もあれば、少ない虫が声を合わせている「小波」もある。

真白なる皿に残りし梨の水 原昇平(2013年1月号)

季題は「梨」。一昔前は長十郎、二十世紀などという品種が幅を利かせていたが、近年では「幸水」、「豊水」などという名を耳にする。いずれも大きく、甘く、水分たっぷりという方向に改良されているもののようである。

さて掲出句は梨を食った後の「皿」を写生している。真っ白な皿に、よく見ると「梨の水」が少々残って見えるというのである。おおよそ梨は四つ割にして皮を剥いて、芯の部分を抉って「皿」に載せ、小型のフォークなどが添えられる。「皿」に残った「梨の水」は実際は「果汁」であるのだが、透明で「水」と見えるのだ。それが「真白なる皿」に少量残っている。いかにも「ありそうな」、「普通の」景として面白い。無論、その梨が迸るような「果汁」を包み込んでいたことも想像される。(本井英)

課題句(2013年1月号)

「探梅」          櫻井茂之 選

探梅やちらつく雪を仰ぎもし		藤永 貴之
餅食うて茶屋に長居や探梅行

探梅や展けて海の見えて来し		津田 伊紀子
立ち止まるたびに静かや梅探る		梅岡 礼子
探梅のあてどは次の角の先		小沢 藪柑子
入院は明日と決まりて梅探る		本井 英

雑詠(2013年1月号)

真白なる皿に残りし梨の水		原 昇平
眺むれば眺むるたびの秋の空
貰ひたる見舞ひの梨を剥ひて呉れ
ありの実の皮のざらりとしてをりぬ

がちくと運べるビールジョッキかな	永田泰三
肩にゐる子どもとも鷽替へにけり	藤永貴之
夜長かな妻は写真の整理して		原 昌平
窓持たぬ路上生活冬ざるる		前北かおる

課題句(2012年12月号)

「セーター」          前田 なな選

セーターと莨の匂ひ帰り来し		櫻井茂之
抱きくるゝセーターのちくちくしたる
安堵するためのセーター引つ被る

告白はセーターのこの編目あたりで	梅岡礼子
たつぷりと着るセーターに安らげる	山内裕子
お揃ひのカウチンセーターデッキへと	田中温子
セーターを編むも不得手で六十路かな	柳沢晶子