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花鳥諷詠ドリル ‐主宰の句評‐ 第57回 (平成18年1月13日 席題 竜の玉・寒釣)

戯れに竜の玉なるイヤリング
竜の玉を、もしかしたら初めて見た人かもしれません。人に教えられて、竜の玉の美しさにすっかり感動して、その二つ採ったのを耳にあてがって、戯れている。という女の人の緊張のない、楽しい女同士の戯れに、耳たぶの白さが浮かびますね。
アラビアンナイトのやうに月冴ゆる
「月冴ゆる」が「冬の月」の傍題になります。冴え冴えとした月。しかもアラビアンナイトのようにと言われてみると、形まで想像できる。「月冴ゆる」だと満月でもあるんだけれど、アラビアンナイトのようにというと、三日月のような感じがするのが不思議ですね。
ままごとの皿に盛られし竜の玉
よく出来ている句だと思います。「まゝ事の飯もおさいも土筆かな」の句があるから、その点異論があるかもしれないけれど、土筆の句として、勿論形になっていますね。
雲の影ふんわり映し山眠る
山容の穏やかさが、自ずから目に浮かぶようで、いい句だなと思いました。
青海波のテーブルマットお元日
「お元日」の置き方がうまいですね。青海波の模様は、古来いろいろ使われるんですが、どこかおめでたい、しかも茫洋たる海を感じさせます。模様一つずつは細かいんですが、全体になると広い感じがしますが、そんな淑気、お正月を迎えた気持ちがよく出ていると思います。

原三佳句集『赤と青』をクールに読む_(稲垣秀俊)

原三佳句集『赤と青』をクールに読む_(稲垣秀俊)

 

 第零句集参加者には、本井主宰との縁で俳句を始められた方が多いが、原三佳さんは、職場の先輩であった原昌平さんの勧めで結社に入られている。

 

 序文にて前北かおるさんが指摘されているように、本稿の中でまず人目を惹くのは家庭生活の句であり、生活者としての実感と健全さを読み取れる。

           掃き寄せてまた木犀の香るかな

           ついで煮のかぼちや一番人気かな

           ポッケからどんぐり除けて濯ぎもの

家庭についての句の中でも、特にお子さんに関する句が出色であると思う。

   一日で日焼けせし子の話し止まず

   朝顔の赤は妹の青は僕の

   ランドセル開けては閉めて入学子

以上の句が個人の家庭について詠まれたものであるにも拘わらず、他者の共感を得るのは、正確な描写があればこその事である。この描写力の基礎をなすのは、観察眼の公正さに違いない。

 

 無私な観察は、比喩表現を用いるならば不可欠である。比喩は主観の問題であるけれども、対象の特徴を正確に捉えなければ決して力のある句にはなり得ないからである。故に次に挙げる句は、原さんの真摯な観察態度を裏付けるであろう。

           磯ぎんちやく迷惑そうにすぼみたる

           ゆつたりと奏づるごとくスキーヤー

 

 以下は句毎に評を試みる。

   天気図の大きく貼られ登山小屋

本来、天気図は登山者自身で描くものだが、知識のない人や、気象通報の時間までに小屋にたどり着けない人もよくいるのであろう。遭難などされては山小屋もたまらないので、サービスとして天気図を出しているわけである。「大きく貼る」という表現の可否については議論がありそうだが、わざわざ大判の天気図を用意するほどであるから、富士山や表銀座などの人気コースであると考えられる。そうすると、登山小屋の賑わいや、天気図の前で進退を議論するパーティーの姿も自然と見えてくる。

 

   日傘派もサングラス派も交差点

日傘を好む人が、全体として落ち着いたファッションを志向する一方で、サングラスを好む人は活発さを滲ませるファッションを目指す。ゆえに日傘派、サングラス派は自然に峻別されるのだが、大都市の交差点では両者が交錯し、あるいは並び立つことも間々あり、作者はそこに面白さを発見したのである。「○○派」という思い切った表現の手柄である。