笹鳴や村に専業農家なく 小沢薮柑子 笹鳴の谷の奥まで造成地笹子今飛び去りしてふ枝揺れて 山内裕子 ダム底となる谿谷や笹子鳴く 崎山野梨壺 チェーンソーの休む間を笹鳴ける 本井英 笹鳴の我に寄り添ひ来るかとも 田島照子
日別アーカイブ: 2011年12月5日
熊鈴が廊下を通る宿の秋 児玉和子(2011年12月号)
季題は「秋」。「宿の秋」という言葉が「ホ句の秋」、「島の秋」、「野路の秋」のような傍題たり得るかどうかは、これからの例句次第。ただし「秋の宿」という言葉は既に「秋」の傍題として登録されている。
また「熊鈴」という語がどの程度広く認知されているかは判らない。例えば『広辞苑』での立項を、その言葉の普及の一般性を測る尺度として利用するなら、「熊鈴」はまだ多くの人の知る言葉とは言えないらしい。一方、近年普及著しいインターネットで検索してみると、「熊よけ鈴」、「熊鈴」はごく普通の言葉として登場する。登山やハイキングの折、熊と遭遇しないために、熊に人間の存在を知らせる「鈴」である。
さて一句は、その「熊鈴」が宿の廊下を通ったというのである。「宿」といっても登山宿であろう。紅葉を楽しもうと多くのハイカーが宿泊している。朝、早立ちの連中が装備を整えて部屋を出て、廊下を通っているのだ。作者はといえば、まだぐずぐず布団の中に居るのかも知れない。「ちゃりん、ちゃりん」とやや高めの鈴の音が、あたりを憚るように通り過ぎてゆく。さあ、今日一日「秋天下の山」を楽しむぞ、という気分が伝わってくる。(本井英)
雑詠(2011年12月号)
熊鈴が廊下を通る宿の秋 児玉和子 秋冷や兎も貂もみな剝製 植物図鑑昆虫図鑑宿の秋 濁み声の懸巣啼きつゝ移りゆく 駒草の陣やロープをはみ出して
マフラーに口を沈めて話すかな 藤永貴之 炎昼に株主散つてゆきにけり 杉原祐之 台所に立ちて桃食ふ夜半かな 前北麻里子 手囲ひに渡してくるる螢かな 飯田美恵子
主宰近詠(2011年12月号)
獺祭忌 本井 英
上方へいまは日帰り西鶴忌
西鶴忌小溝にかかる橋にも名
勤番が覚えし悪所西鶴忌
花オクラ下着のやうに吹かれたる
抜け道へ下る子規忌の炭団坂
一つ灯に一人起きゐて獺祭忌
討死も覚悟の一誌獺祭忌
爽やかや五百円玉ぱちと置き
眉唾の咄つぎつぎ根釣人
はじまつてをれどだらだら祭かな
ざつくりと欠けて懸かりて寝待月
畑それてなぞへにかかり韮の花
芋水車かけてしばらくよく濁る
言問へばはぐらかすなり芋水車
露草の青が葎を上品に
北佐久の南なだりの豊の秋
紫菀咲いてぶつかりさうや深廂
褒め仰ぎをれば新松子も見ゆる
怒るまで時間のかかり鰯雲
烏瓜灯る色とはこれよりぞ