主宰近詠(2011年12月号)


獺祭忌     本井 英

上方へいまは日帰り西鶴忌

西鶴忌小溝にかかる橋にも名

勤番が覚えし悪所西鶴忌

花オクラ下着のやうに吹かれたる

抜け道へ下る子規忌の炭団坂



一つ灯に一人起きゐて獺祭忌

討死も覚悟の一誌獺祭忌

爽やかや五百円玉ぱちと置き

眉唾の咄つぎつぎ根釣人

はじまつてをれどだらだら祭かな



ざつくりと欠けて懸かりて寝待月

畑それてなぞへにかかり韮の花

芋水車かけてしばらくよく濁る

言問へばはぐらかすなり芋水車

露草の青が葎を上品に



北佐久の南なだりの豊の秋

紫菀咲いてぶつかりさうや深廂

褒め仰ぎをれば新松子も見ゆる

怒るまで時間のかかり鰯雲

烏瓜灯る色とはこれよりぞ