「蜩」 藤森荘吉 選
呼び交はすかに蜩のいつせいに 辻梓渕 夜を呼ぶやうにかなかな鳴き続く
蜩にさびしき心のせてをり 牧田誠津子 蜩や田舎に育ち街に老ゆ 岩本桂子 蜩や写経の筆を止めて聞く 清水明朗 蜩や母の帰りを待ち侘びし 田尻くがを
「蜩」 藤森荘吉 選
呼び交はすかに蜩のいつせいに 辻梓渕 夜を呼ぶやうにかなかな鳴き続く
蜩にさびしき心のせてをり 牧田誠津子 蜩や田舎に育ち街に老ゆ 岩本桂子 蜩や写経の筆を止めて聞く 清水明朗 蜩や母の帰りを待ち侘びし 田尻くがを
ホームセンター裏とはなりぬ墓洗ふ 朴四五人 祖母を知るのみなる墓に参りけり 炭住になほも住まひて生身魂 手花火の色のうつれる煙かな 枝豆を喰ひつゝいつか人の親下車までのしばらくを立ち夏の海 前北かおる 池の面を新樹の零すもの流れ 児玉和子 朴若葉一枚ごとに風はらみ 山内裕子 落花地をしばらく駆けて風に乗る 前田なな
第五巻のはじめに 本井 英
「夏潮」第五巻第一号、八月号をお届けします。 創刊から四年、「夏潮」は順調な歩みを進めて参りましたが、この間わが日本は大きな試練の時代を迎えました。さきの大震災で命を落とされた方々のご冥福を心よりお祈りしますとともに、いまだに行方の判らない方々の安否が案ぜられます。また命こそ助かったものの家屋、財産をすっかり奪われてしまった方々には何とお慰めすべきか言葉がありません。さらに福島第一原発の事故は未だに収束の目途も立たず、地元で生活の自由を奪われた皆さん、並びに風評被害等に遭われた方々のお気持ちを察すると心が痛みます。
こんな中でもわれわれはこの国土、山川草木、鳥獣虫魚を俳句に諷詠することで造化を讃えようと思います。いな、このような時だからこそ花鳥を諷詠することでこの国土を、さらには生きている我々を意味深いものとしようではありませんか。後ろを振り返るばかりでなく、前を向いて、立ち現れる季節を迎えましょう。
さて「夏潮」はこの八月、初めての「別冊 虚子研究号」を発刊することができました。これは虚子研究を志す方なら誰にでも開かれた誌面ですが、勿論「夏潮」の仲間の虚子研究を期待してのものです。大いに「別冊」を利用していただきたく存じます。
また九月からは「夏潮 第零句集シリーズ」が始まります。こちらは若手に発奮してもらうための企画です。「夏潮」で育った若者たちが、将来、花鳥諷詠の道をさらに切り開いてくれることを期待してのものです。多くの会員の応援を切望します。
さらに慎重に 本井 英
たぎつ瀬の白一色や蕗の花
二
声にまた二 声に雉とほし
出港やがつんがつんと卯浪割り
けふも黄のすこし進みて花海桐
青鷺の三歩目さらに慎重に
ひろびろと日の明るさや燕子花
野をつなぐ橋の薄暑も楽しみて
木下闇へとつ組みあひの烏墜つ
四つ辻の溶岩に生ひ出し立葵
天道虫騙しの所業まぎれなし
葱坊主菜箸ほどの茎の上
万緑に消えゆく雨の鉄路かな
沿線のレタス畑も藤のころ
何の蔓かや黒南風に泳ぎづめ
風がおしひろげ泰山木の花
薔薇園に練り込んで来しバグパイプ
バグパイプの通奏低音薔薇越えて
をみな等の摘まみては嗅ぐ樟落葉
独り棲む独りの音や蝉丸忌
夏勤の最中の師僧遷化かな