主宰近詠(2011年8月号)


さらに慎重に   本井 英

たぎつ瀬の白一色や蕗の花

声にまた二 声に雉とほし

出港やがつんがつんと卯浪割り

けふも黄のすこし進みて花海桐

青鷺の三歩目さらに慎重に



ひろびろと日の明るさや燕子花

野をつなぐ橋の薄暑も楽しみて

木下闇へとつ組みあひの烏墜つ

四つ辻の溶岩に生ひ出し立葵

天道虫騙しの所業まぎれなし



葱坊主菜箸ほどの茎の上

万緑に消えゆく雨の鉄路かな

沿線のレタス畑も藤のころ

何の蔓かや黒南風に泳ぎづめ

風がおしひろげ泰山木の花



薔薇園に練り込んで来しバグパイプ

バグパイプの通奏低音薔薇越えて

をみな等の摘まみては嗅ぐ樟落葉

独り棲む独りの音や蝉丸忌

夏勤の最中の師僧遷化かな