さらに慎重に 本井 英
たぎつ瀬の白一色や蕗の花
二
声にまた二 声に雉とほし
出港やがつんがつんと卯浪割り
けふも黄のすこし進みて花海桐
青鷺の三歩目さらに慎重に
ひろびろと日の明るさや燕子花
野をつなぐ橋の薄暑も楽しみて
木下闇へとつ組みあひの烏墜つ
四つ辻の溶岩に生ひ出し立葵
天道虫騙しの所業まぎれなし
葱坊主菜箸ほどの茎の上
万緑に消えゆく雨の鉄路かな
沿線のレタス畑も藤のころ
何の蔓かや黒南風に泳ぎづめ
風がおしひろげ泰山木の花
薔薇園に練り込んで来しバグパイプ
バグパイプの通奏低音薔薇越えて
をみな等の摘まみては嗅ぐ樟落葉
独り棲む独りの音や蝉丸忌
夏勤の最中の師僧遷化かな