日別アーカイブ: 2011年7月2日

主宰近詠(2011年7月号)


桜鯛        本井 英


嘘であつて欲しきことども万愚節

四月馬鹿うそ楽しめし頃のこと

担桶タ ゴの水揺れをさまれば虻止まる

桜鯛イトを真下に締め込むは

踏立フタテずらせば桜鯛薄闇に



生き締めの血糊美し桜鯛

寿福寺が車窓をよぎる虚子忌かな

椿寿忌の大を為したる小躯 かな

鎌倉の芹の小溝のここにまた

谷戸奧にひとひろがりや花の寺



強風に困惑しをり若楓

爵位とてありし時代の著莪の花

葉の斑また面白きかな二輪草

ほがらかに鶸が渡りて河温む

肉を焼く香のたちのぼる若葉かな



吾亦紅若葉の折り目折り目かな

鼈甲を桶に浸して春深し

藤浪や人を盛りあげ太鼓橋

藤の根にライトアップのコード伸び

どの幹の花とも知れず藤垂るる

主宰近詠(2011年6月号)


サクラとや     本井 英

 

大鉢の藍のふかさや君子蘭

掌をそへて拭ふ広葉や君子蘭

二日灸三密加持と説かるれば

書割のやうに春潮イルカショー

干しあがるウエットスーツ春の蠅



風止めばゆきわたりたる春日かな

里山のおしるこ色の芽吹きかな

一水のマフラーほどに落椿

丘の日に全開の犬ふぐりかな

玻璃ごしに春日貼り付くリノリウム



瑕瑾なき白ゆきとどく椿かな

蘂の黄のいよよ華やぎ白椿

春寒の小諸は風ぞ厭はしき

豆柴犬の名はサクラとや春浅し

春空に色のながるる川原鶸



嚠喨と囀るときの四十雀

はくれんの傷みそめたるココア色

はくれんは二階の窓のために咲く

はくれんに午後の永さの始まれる

ほぐれつつ畳皺あり紫木蓮