第五巻のはじめに 本井 英
「夏潮」第五巻第一号、八月号をお届けします。 創刊から四年、「夏潮」は順調な歩みを進めて参りましたが、この間わが日本は大きな試練の時代を迎えました。さきの大震災で命を落とされた方々のご冥福を心よりお祈りしますとともに、いまだに行方の判らない方々の安否が案ぜられます。また命こそ助かったものの家屋、財産をすっかり奪われてしまった方々には何とお慰めすべきか言葉がありません。さらに福島第一原発の事故は未だに収束の目途も立たず、地元で生活の自由を奪われた皆さん、並びに風評被害等に遭われた方々のお気持ちを察すると心が痛みます。
こんな中でもわれわれはこの国土、山川草木、鳥獣虫魚を俳句に諷詠することで造化を讃えようと思います。いな、このような時だからこそ花鳥を諷詠することでこの国土を、さらには生きている我々を意味深いものとしようではありませんか。後ろを振り返るばかりでなく、前を向いて、立ち現れる季節を迎えましょう。
さて「夏潮」はこの八月、初めての「別冊 虚子研究号」を発刊することができました。これは虚子研究を志す方なら誰にでも開かれた誌面ですが、勿論「夏潮」の仲間の虚子研究を期待してのものです。大いに「別冊」を利用していただきたく存じます。
また九月からは「夏潮 第零句集シリーズ」が始まります。こちらは若手に発奮してもらうための企画です。「夏潮」で育った若者たちが、将来、花鳥諷詠の道をさらに切り開いてくれることを期待してのものです。多くの会員の応援を切望します。