投稿者「taizo」のアーカイブ

ひとわたり揺れてポピーのひと休み なな (泰三)

 全くもって暑いですね。汗をどんどんかいているのですが、一向に体重は減らない泰三です。皆さんはいかがお過ごしですか。

 季題は、ポピーで夏。雛罌粟の洋名である。なお花が散った後の球状の実は、罌粟坊主と言う。

 「ひとわたり」とは、全体にわたって、一通りという意味。広いポピーの畑なのだろう。緩やかな風に畑全体が一度ゆっくりと揺れる。決して強い風でも、吹き通しの風でもない。吹いたかと思うとしばらく無風の時が続く。その時あたかもポピーが一休みしているように見えた。ポピーの大振りな花びらがゆっくりと揺れる様が目に浮かぶ句である。

 上五の「ひと」と下五の「ひと」のリフレインは、あたかもリズム良く吹いてくる初夏の風のようで心地よい。

 

 

山笑ふかなし山てふ名を持ちて 好子 (泰三)

 暑さにへばってしまいそうな泰三です。皆様はいかがお過ごしですか。

 季題は、「山笑ふ」で春。冬の間、眠っていた山が目を覚まし、笑うのである。

   「かなし山」という山がある。由来は分からないが、悲しいことがあったのだろうか。その山が名前に反して笑っている。名前なんて、人間が勝手につけたもの。自然には、人の営みなんて関係ない大きな流れがある。この句を読んでそんな気持ちになった。

 

初蝶の日なたに夫と待ち合わす いづみ (泰三)

 季題は、蝶で春。初蝶は、その年初めて見るの蝶の事。独身の頃は、良く恋人と待ち合わせをするが、一緒に暮らす配偶者となるとその機会はずっと減る。仕事だろうか、お互い違う場所に出掛けていた二人が、待ち合わせをしている。もちろん、「初蝶の日なたで待ち合わせね」などと言って待ち合わせが成立するわけはなく、待ち合わせの場所が、偶然日なたで、そこに初蝶が来てくれただけである。

 日常の中のちょっとした幸せが感じられる句である。待っている時間も蝶々のおかげで楽しい時間となった。

用水をどぶどぶ鳴らし雪解水 茂之 (泰三)

  誠に、久々の投稿で申し訳ありません。泰三改め、怠蔵とでもそろそろ名乗るべきかと考えているこの頃です。今月は己に厳しくどんどん投稿してゆく所存であります。

  季題は、雪解水(ゆきげみず)で春。春の陽射しによって雪が溶けたものである。さて、この句。大量に流れ込んだ雪解水が用水路にどぶどぶ鳴っている。生き物たちが目覚める初春のエネルギーを感じると共に、冷たく澄んだ水が溢れている心地よい様が目に浮かぶ。

 ただ何度も読んでゆくうちに、「雪解水が用水を鳴らす」、すなわち「水が水を鳴らす」という表現が気になってきた。意味を明白にするには、「用水路」、もしくは「クリーク」と言った言葉を用いた方が良いのだろう。もしくは、「用水にどぶどぶ鳴るや雪解水」だろうが、この表現では面白くない。

 辞書で、「用水」を引いてみたところ、「飲料・灌漑・選択・防火などの用に供するための川または引き水」とある。「用水」に「川」との意味があるのであれば、この句の表現でいいのかもしれない。

膝たたみきりんの休む春の昼 なな (泰三)

 汐まねきの更新をサボりがちで申し訳ないと思いつつ、また遅れてしまった泰三です。本当にすいません。

 季題は、春の昼。角川歳時記では、春昼(しゅんちゅう)の傍題としてあげられる。

 動物園の風景であろう。動物園の動物たちは、だいたい一年中、寝そべっていたり、坐っていたりと活気はない。この句のきりんもまた坐っているのである。ただその様を「膝をたたみ」と写生した。なるほど言われてみると、きりんは長い足の膝をたたんで休んでいる。しっかりとした写生句は、やはり強い。

 けだるい春の昼の動物園の様子が目に浮かぶ佳句である。