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雑詠(2021年1月号)

残りページ気にしつつ読む良夜かな	馬場紘二 
浮き上がる一面の白蕎麦の花 
クラシックホテルの庭の良夜かな 
お隣につい声掛ける良夜かな 

天の川見に行くバスに乗り込める		飯田美恵子 
背のファスナー開いたままに蟬の殻	小山久米子 
故郷に妻子ある人鯊日和		矢沢六平 
黒松に熊笹赤松に芒			天明さえ

主宰近詠(2021年1月号)

無実顔    本井 英

秋耕の一鍬ごとに土香り

岸釣の釣るれば妻の駆け寄れる

おしろいは実を零したり萼残り

待ちまうけをれば尾花に風いたる

泥まみれなるものも朴落葉かな



女郎蜘蛛夫は無実顔にをり

客寄せのコスモス畑頃を過ぎ

スルタンの宝珠のやうや藪茗荷

鵙はひかへめ画眉鳥聴こえよがしに

トンネルの中ほど高し秋の風



浜砂に消ゆる小流れ暮の秋

街の秋潮路橋とは良き名もて

秋風に船首いかめしタグボート

万両五六亭々といふ姿にも

白マスク黒マスクはた顎マスク



煽つたび陽射し掬ひて芭蕉葉は

句碑そこに建つがたのしみ小鳥来る

緋毛氈の緋に新旧や秋日和

咲きつれて茶の花姸を競ふなく

茶の花や不平不満の蕊を吐き

課題句(2020年12月号)

課題句「著ぶくれ」           釜田眞吾 選

著ぶくれて大三角を指させる		冨田いづみ
著ぶくれといふしあはせに包まるる
著ぶくれのまゝに名刺を交はしけり	黒田冥柯
著ぶくれが一声掛けて立ちにけり	田尻くがを
著ぶくれてぎゆうぎゆう抱き合ふ別れ	梅岡礼子
さなきだに躓きやすし著ぶくれし	本井 英

遡る波を見てをり橋涼み  山内裕子

 季題は「橋涼み」。虚子には〈橋涼み笛ふく人をとりまきぬ〉という印象的な句がある。「納涼」の句には一見にぎにぎしく見えながらも、どこか静かで、ときに淋しさを伴うことが多い。この句にもそうした静かな淋しさが漂う。ところで川面に立つ「波」にはおよそ三種類の「波」が考えられよう。一つは上流から流れ下るときに川底の形状などによって波状となるもの。「川波」と言えば普通このことだ。ところが河口付近では海の影響から、干満に伴うものや沖のうねりが河面にまで及ぶことがある。また上流下流を問わず、静水域では「風」の影響で風上から風下にかけて川水が波状をなす。これも立派に「波」だ。一句の状況は「遡る波」というのであるから河口近くの「うねり」の影響か、あるいは「風波」のことであろう。  なかなか収まらない夕凪の暑さを忘れる為に川畔までやって来た作者。「橋」の上まで出て、見下ろした河口近くの川面は海の方面からの「風」で細かいさざ波を立てている。その細かい川波は上流へ上流へと畳み止まないというのである。じっと「川波」を見ているうちに、少し淋しくなってきた作者かもしれない。(本井 英)