「夏潮」別冊虚子研究号第二号をお届けします。「夏潮」別冊虚子研究号への思いは既 に第一号の「発刊の辞」に述べました。そこに「年一冊のベースで」と記しましたことが 取り敢えず守れたことを自祝したいと存じます。 今号に於いて、創刊号に倍する執筆者を得たことを嬉しく存じております。どなたも心 から文学を愛し、俳句を愛し、虚子にたいして深甚の敬愛の情をお持ちの方々です。「群 盲象を撫づる」という諺があります。虚子を 「象」に擬え、筆者の方々を「群盲」に喩え てはまことに失礼なことになってしまいますが、要はそれぞれの立場、主義、知見の異な りこそ、「巨大なもの」の実像に迫る最大の武器になるのではあるまいかと思うのです。 虚子顕影のシステムは既に幾つか数えることが出来ます。しかしこれは多ければ多いに超 したことはない。「夏潮」別冊虚子研究号は、開かれた「小さな広場」として、これから も多くの執筆者と読者を歓迎したいと思います。 第一号の 「発刊の辞」では言及しませんでしたが、仮に名付けて「記念館だより」とい う記事を毎号掲載してゆく所存です。世の中に「虚子顕影」を志す記念館が現在三箇所あ り、日々研究・顕影の活動をされています。簡単に「記念館」とは言っても、その運営は 並大抵の努力では進みません。これらに携わる方々へ最犬の讃辞を惜しまない者ですが、 さらに本研究号の紙幅を割いてご研究の一端なりとも世に広報したいと考えます。 今号も、なんとか「非売品」としてお配りしましたが、資金的な接助を担むものではあ りません。応援してやろうとお思いの方は何卒よろしくお願い申し上げます。 なお本号論文掲載順は執筆者の五十音順とさせていただきました。
目 次一、 虚子俳壇復帰の戦略 『俳句と自分』とその背景 井上泰至 二、 虚子連句私解 奉納歌仙 『唯訴る』 の巻 其二 大島富朗 三、 虚子選についての覚え書き 岸本尚毅 四、 関東大震災と虚子 筑紫盤井 五、 「虚子の文学」とは何か 山本健吉から見える高浜虚子 仁平 勝 六、 虚子の小説テーマ 『風流撫法』をめぐつて 本多 燐 七、 「満州咏草」基礎研究 前北かおる 八、 虚子の周辺~暁烏非無 松岡ひでたか 九、 「花鳥諷詠論」の発端 本井 英 《記念館だより》 一、 虚子と芥川能芝介の俳交 新出書簡を中心に 芦屋虚子記念文学館 学芸員 小林祐代 二、 新出 『岡安明壽宛て虚子書簡』 紹介 小諸市立虚子記念館 前館長 相場洋威 館長 斎藤克実 三、 記念館紹介 鎌倉虚子立子記念館 館長 星野高士
ISBN978-4-939116-81-0 C0092
「夏潮」別冊 「虚子研究号」 Vol. II (2012)
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「夏潮」 虚子研究号 第二号 発刊に際して 本井 英