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花鳥諷詠ドリル ‐主宰の句評‐ 第95回 (平成18年7月14日 席題 ブーゲンビレア・西日)

石垣にブーゲンビレアタンゴ鳴る
石垣は石で組み上げた垣でしょうね。たとえば沖縄とか、台風のよくやって来る所では、日本でも石垣の塀があります。あるいは、八丈島あたりもそうですが…。台風がよくやってくる所というのは、自ずから海水温の高い地域ですから、台風の時に石垣を組むということもあろうかと思います。ではタンゴはどうするか。これは説明のしようがない。実際そうだったと言えば、それっきり。ただ、タンゴって、コンチネンタル・タンゴとアルゼンチン・タンゴと様子は違うんでしょうが、「チャッチャッチャッチャ」という情熱的なリズムと派手なバンドネオンの音なんていうのを考えると、なるほどブーゲンビレアの持っている色合いに通じるな。とにもかくにも、ある南の台風が来そうな島とか、そんな所で見かけた光景というふうに、私は思いました。
山見ゆる軒につるして蛍かご
これは地味な句だけれど、面白いですね。蛍かごをつるすんだから、お約束としては宵から夜にかけてだと思います。昼間だってつるさないわけではないけれど、やはり宵から夜にかけてでしょう。でも宵から夜にかけて山が見えるっていうのは、よーく見ると、空の色と黒々とした山塊が見える。そんなような別荘地か高原みたいな所で、「どこへかけようか」と窓を開けたら、ちょうど目の前に空と山の色の違いがあって、「あ、山が見える。ここにしましょうよ。」 と言って、籠をつるして、しばらく蛍を楽しんだ。ということだろうと思います。
葉の色を変えて寄せ来る青田風
もうちょっとうまい言い方もあるかなと思いますが、見ていらっしゃるものはひじょうに的確で、誰も文句のつけようのない、青田を風がさーっと渡ってくる。稲の葉というのは、表と裏があって色が違う。ですから青田風がぱーっと来た時に、さささささと色が変っていく。それをよく見つけられたなと思います。ただ「葉の色を変えて」は違う表現があるかもしれません。この作者であることを知れば、どうぞもう一回お考えになって下さい。
浜日傘ゴッホの青の死海かな
ゴッホの青ってどういう青かわからないんですが、まあ、ガッシェ医師の着ていた服のようなあんな色かもしれませんが、ともかく濃い青だろうという気がします。濃い青に死海があったということだろうと思います。
長靴のずぶりと嵌り梅雨の畑
お百姓じゃないですね。こういうことをするのは。お百姓なら、わかるんですね。雨の降り方だとか、自分の畑の土の性質をよく知っているから、「ああ、ここはずぶっと入るぞ。」それがずぶっと入ってしまって、「あららら。」というのは、素人というか、週末園芸を楽しんでいるような人の「ありゃ」という感じがよくわかって、その土の質によっては、梅雨の長雨だけでも、十分ずぶっと入ることがあります。そんな梅雨の畑の一つの楽しい光景が目に浮かんでで、面白うございました。