線分を短く星の飛びにけり   藤永貴之(2015年9月号)

季題は「星飛ぶ」、「流星」の傍題である。初秋の夜空を見上げていたら、星が飛んだ。その流星は流れ始めたと思ったらすぐに消えた。はなはだ短い航跡であった、というのである。一句の手柄は、勿論「線分」。我々が日常生活では殆ど使わない言葉でありながら、殆ど全ての人に学生時代に数学の時間の黒板に引かれた、直線の呼称として「線分」が全く、紛れることなく蘇ってくる。 きちっと定義された、点と点を結ぶ直線。それと全く同じような「短い直線」として、星が夜空の黒板を短く走ったのである。一句全体の措辞も「線分」といった「目立たしい言葉」を抱きとめて無理なく働いている。(本井 英)

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