秋の深さを 本井 英
雨の日はおじぎをしない含羞草 秋水のせせらいでゐる干潟かな とびはぜを仕留めでけりな鴫の嘴 途中から猪垣に沿ふ下山道 猪垣の内と外との立ち話
白萩の白や濃淡なかりける たらひ舟とて乗り込めば水も澄み 豆柿や弟兄 もなく犇めきて 城跡や柄長まじりに山雀も 秋の波一枚づつを寄するかな
啄木鳥は幹の裏へといつたまま 荻分けて釣座へ小径ありにけり 高く飛ぶときも鶺鴒波描き 蘆の花池を巡るに四半時 祖師像にお綿着するも寺の秋
臨終の間の煌々とお命講 山梔子の色いたらねど稜六つ 閘門の照らされてゐる夜寒かな 夜寒の灯遠く一連 島泊り あひ会うて秋の深さを言はず歩す
主宰近詠(2014年1月)
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