主宰近詠(2022年4月号)

父の代の   本井 英

父の代の松飾には如かざれど

食積が卓の真中にそびえたり

食積をのぞきに来ては子供たち

遠来の孫娘より屠蘇を酌む

賀状なほ四半世紀を会はざるに



宝引の緒の這つてゐる疊かな

綱引やちらちら白いものも舞ひ

墓地通り抜けて七福詣かな

福詣とよ寺町に人通り

韋駄天は福神ならね詣でけり



初場所の向正面なる女

素手の子の一人まじれる雪まろげ

冬ざれて一花とてなき母の墓

枯葎襖なしたり滑川

川床を拾ひ歩きや寒最中



寒鯉の影寒鯉の腹の下

寒肥やいちいち話しかけながら

路地に日のあふれ果して寒梅も

春を待つべし池に棲み川に棲み

難題をかかへ込みつつ春を待つ

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