キュルキュルと目白喜び臥龍梅   岡﨑裕子

 季題は「臥龍梅」で春。一句の主役は、「キュルキュル」と喜び啼く「目白」だが、「目白」だけでは秋の季題となる。ただし「目白」を「秋」と明確に規定しているのは『虚子編新歳時記』、『ホトトギス新新歳時記』くらいで、角川の『俳句大歳時記』等は近年、「目白」などの小禽類の多くを「夏季」としている。このことは本句の句評とは直接的な関係はないが、近世初頭の『毛吹草』以降、「季寄せ」類が踏襲してきた「小鳥」を秋とするか、近代の野鳥研究家および山本健吉氏による「見直し」を受け容れて「夏」と変更するかの問題となる。

 「目白」を一句の季題となし、秋の景として鑑賞することも不可能ではないが、前述した如く「キュルキュル」という楽しげな鳴き声からはやはり「春」を感じずにはいられない。

 一句の手柄は、横に長く連なり「臥龍梅」の名を得て咲き誇る「梅の木」に纏わりつきながら、「目白」が洩らす「キュルキュル」という鳴き声の、楽しげな様子の擬音表現が、いかにも楽しげでリアリティーの感じられるところであろう。(本井 英)

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