日別アーカイブ: 2023年11月7日

雑詠(2023年10月号)

競馬場のスタンド見ゆる植田かな	冨田いづみ
鷺がまた翔んでゆくなり青田波
咲いてはやかよふ風ありねむの花
梅天の旧中川の水まんまん
若竹を抜けくる風のやはらかく

ラ・フランス切れば古楽器めきにけり	山口照男
十薬の広がるままや老の庭		岩﨑眞理子
門灯の丸く点りて守宮鳴く		山内裕子
野晒しの石貨めく干草ロール		稲垣秀俊

主宰近詠(2023年11月号)

よろづ華美には   本井 英

茶立虫学芸員を天職と

茶立虫日付変はつてをりにけり

二日月に幅といふものありにけり

二日月舐めたら溶けてしまひさう

ありながら潮に映らず二日月

街の秋まことしやかに巣箱掛け

秋雲の全体移り止まぬかな

月の道烏帽子岩へとさしわたり

気動車に二十パーミル犬子草

生返事ばかり枝豆喰ひながら
老人の日とて他人事ならずをり

駅チャイムは希望の轍秋の風

秋風につつまれ細き撞木かな

蚊の闇を閉じ込めてある円位堂

運河てふ小駅のありて秋の雨

(  野田 上花輪歴史館)    
(タチ)の秋よろづ華美には亘らざる

荻の穂の花火のやうにひらくとき

茶の実ごつごつ茶の蕾ぷちぷちす

川沿ひの屋並今宵も月佳けん

サップとて秋潮につつ立つ人等

主宰近詠(2023年10月号)

拳ほど  本井 英

世界中に炎天やわが頭上また

盆過ぎの波の高さに浜せまし

仲たがひの母娘扇とサングラス

浴びせくる言葉扇で払ひつつ

駅前は予備校ばかり町溽暑

閑散と小学校や盆も過ぎ

いぢめつこゐたころのこと法師蟬

夏雲の湧いてころげて拳ほど

とんぼうに厳然とある水面かな

小蛇渡るよかそけくも波をたて
移築せし上がり框に風涼し

藁葺の藁かはききり臭木咲き

大風ありけむ無患子の青が散り

険悪や入道雲の腰回り

雷蔵しどろんと黒き雲の腹

一疵なき芭蕉葉とうち仰ぐなり

芭蕉葉の触れ合ふ音に夜の更くる

もう大根蒔き了へしよと漁師どち

その漁師日焼の耳のよく動き

ときの来て月の桂子召されたり(  悼 岩本桂子さま)